マイホーム(居住用財産)を売却したときの3,000万円特別控除を徹底解説

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税務一般

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この記事の執筆者:角田 壮平

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は200件以上。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

みなさんこんにちは!
相続専門の税理士法人トゥモローズです。

不動産を売却した場合には、その利益に対して所得税と住民税がかかります。
その利益(譲渡所得)の計算方法は下記の通りです。

収入金額 – (取得費 + 譲渡費用) – 特別控除額 = 課税譲渡所得金額

上記算式の最後にある特別控除額の最たるものが今回解説するマイホームの3,000万円特別控除となります。
今回は、このマイホームを売った場合の3,000万円特別控除について、わかりやすく徹底解説します。

なお、別の特別控除の論点である相続した空き家の3,000万円控除については、相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除(空き家特例)を徹底解説をご参照ください。

ちなみに、他の計算要素については、下記コラムをご参照ください。
取得費(譲渡所得)をわかりやすく徹底解説!
【不動産の譲渡費用一覧】これって該当する?しない?

譲渡所得の詳しい計算方法は、土地建物を売ったときの税金(譲渡所得)の計算方法を徹底解説をご参照ください。

本コラムは、
「マイホームを売った場合の税金を知りたい。」
「居住用財産の特別控除の要件を知りたい。」
という人にオススメです。

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マイホームの3,000万円控除とは?

マイホームの3,000万円控除とは、住んでいた不動産を売った場合に、一定の要件を満たしたときは、その利益から3,000万円をマイナスできる特例制度です。
通常不動産を売却したときにはその利益に対して所得税と住民税が20%かかるため、節税効果は600万円もある特例となります。
したがって、要件を満たすか満たさないかで高級車1台買えるかどうかの違いが出ますので次の要件をガッツリ確認お願いします。

3,000万円控除の要件

3,000万円控除の要件は下記の通りです。

1. 所有者が居住している家屋(土地、借地権を同時に売った場合も含む)を売ること
2. 所有者が居住しなくなった日以後3年を経過する日の12月31日までに家屋(土地、借地権を同時に売った場合も含む)を売ること
3. 買主が売主の配偶者、直系血族等の特殊関係者でないこと
4. 3,000万控除を受ける不動産につき他の一定の特例制度の適用を受けていないこと
5. 3,000万控除を受ける年の前年又は前々年に一定の居住用財産関係の特例制度の適用を受けていないこと
6. 3,000万控除を受ける年、その前年又はその前々年に一定の居住用財産関係の特例制度の適用を受けていないこと
7. 売主が一定の期間に住宅ローン控除の適用を受けていないこと

一つ一つの要件につき詳細を確認していきましょう。

1. 所有者が居住している家屋(土地、借地権を同時に売った場合も含む)を売ること

3,000万控除の特例は家屋の特例です。
これを最初に理解しないとこの特例の本質は理解できません。
土地のほうが利益が大きくなりますが、基本的に家屋を売らないとこの特例の適用ができません。

では、所有者が居住していた家屋とはどのような家屋なのでしょうか?
この要件については、以下のQ&Aで理解を深めて行きましょう。

■ Q & A

Q 居住用家屋が複数あった場合にも適用できますか?

A 主たる居住用家屋なら適用可能
【解説】
居住用家屋が複数あった場合には、その所有者が主として居住の用に供している家屋のみ適用が可能です。

Q 家屋を取り壊した後に売却した場合でも適用できますか?

A 原則適用できない
【解説】
前述の通りこの特例は家屋の特例のため家屋を売却していないと適用はできません。
ただし、以下の要件を満たす場合には、敷地のみの譲渡でも適用が可能です。
①家屋を取り壊してから1年以内に契約していること
②取り壊した家屋に居住しなくなった日以後3年を経過する日の属する年の12月31日まで譲渡したこと
③家屋を取り壊してから譲渡契約日までにその敷地を貸付その他の用に供していないこと

Q 3,000万円控除の適用を受けるためだけに居住していた家屋でも適用は可能ですか?

A 適用できない
【解説】
以下のような家屋は3,000万控除の適用はできません。
①この特例の適用を受けるためのみの目的で入居したと認められる家屋
②別の居住用家屋の改築期間中や新築期間中だけの仮住まいの家屋
③別荘などの趣味、娯楽又は保養のために所有する家屋

Q 店舗兼住宅でも適用できますか?

A 居住部分の床面積に相当する金額のみ適用可能
【解説】
店舗併用住宅でもこの特例の適用は可能ですが、店舗部分は原則適用できません。店舗と住宅の区分けは床面積の比で行います。
なお、所有者の居住の用に使用している部分の床面積割合がおおむね90%以上の場合には、その家屋全体を居住の用に供しているものとしてその全てにつき特例の適用が可能です。

Q 転勤による単身赴任で大阪に住んでいますが、家族が住んでいる東京の土地建物を売ったら3,000控除の適用は可能ですか?

A 適用できる
【解説】
転勤や療養などのため社会通念上同居することが通常と認められる配偶者等と離れ、単身で他に起居している場合であっても、その転勤等の事情が解消した後に配偶者等と同居すると認められる場合には、その配偶者等が居住している家屋をその単身赴任者が居住している家屋として3,000万控除の適用が可能です。

Q 妻が家屋を保有していて土地は私が保有しています。家屋を保有していない私は3,000万円控除の適用はできませんか?

A 適用できる
【解説】
何度も言うように3,000万控除の特例は家屋の特例であるため家屋の所有者でないと原則は適用できません。
ただし、下記の要件を満たす場合には土地所有者であっても3,000万円控除の適用が可能です。
①家屋の所有者と土地の所有者がその家屋とともにその土地を譲渡したこと
②家屋の所有者と土地の所有者が親族であり、かつ、生計を一にしていること
③土地の所有者が家屋の所有者とともにその家屋に居住していること

2. 所有者が居住しなくなった日以後3年を経過する日の12月31日までに家屋(土地、借地権を同時に売った場合も含む)を売ること

3,000万控除は売却時に居住していない家屋でも過去に居住していた家屋なら適用が可能なのです。
ただ、10年も前に居住していた家屋では駄目です。
3年縛りがあります。
正確には、居住しなくなった日以後3年を経過する日の12月31日までの譲渡に限られます。
例えば、令和3年中に売却したならば、、平成30年1月2日以後に転居していれば大丈夫、逆に平成30年1月1日以前に転居していたら適用できないのです。

■ Q & A

Q 2年前に老人ホームに入居して自宅に戻れそうにないから売却したいのですが3,000万円控除の適用は可能ですか?

A 適用できる
【解説】
老人ホームに転居してから2年しか経過してませんから適用が可能です。
なお、老人ホームに入居した場合には、空き家特例や小規模宅地の特例で適用関係が複雑ですので詳しくは下記コラムをご参照ください。
老人ホーム入居者が亡くなった場合の相続税申告
【空き家の3,000万円控除】と【小規模宅地の特例】の要件を徹底比較
相続した空き家を売ったときの3,000万円特別控除(空き家特例)を徹底解説
【小規模宅地の特例】被相続人が老人ホームに入居していた場合の論点をパターン別に徹底解説

3. 買主が売主の配偶者、直系血族等の特殊関係者でないこと

買主と売主に親族等の関係があると3,000万控除の適用はできません。
具体的な関係性ととしては下記の通りです。

■売主の配偶者
■売主の直系血族
■売主の生計一親族
■売主の同居親族
■売主と内縁関係にある者及びその親族
■上記以外の者及び売主の使用人以外の者で売主の資金により生計を維持している者及びその親族
■売主の特殊関係法人

4. 3,000万控除を受ける不動産につき他の一定の特例制度の適用を受けていないこと

3,000万控除の適用を受ける不動産については、下記の他の特例と重複適用はできません。

■交換特例(所法58)
■収用交換特例(措置法33~33の3)
■収用交換5,000万控除(措置法33の4)
■特定の事業用資産の買換特例(措置法37)
■特定の事業用資産の交換特例(措置法37の4)
■大規模住宅造成の交換特例(措置法37の7)
■平成21年及び平成22年に土地等を先行取得した場合の特例(措置法37の9の5)
■その他一定の特例(措置法37の9の4など)

5. 3,000万控除を受ける年の前年又は前々年に一定の居住用財産関係の特例制度の適用を受けていないこと

3,000万控除の適用を受け年の前年又は前々年に下記の居住用財産関係の特例制度の適用を受けていた場合には3,000万控除の適用はできません。

■居住用財産の3,000万控除(措置法35①)
■居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措置法41の5)
■特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除(措置法41の5の2)

6. 3,000万控除を受ける年、その前年又はその前々年に一定の居住用財産関係の特例制度の適用を受けていないこと

3,000万控除の適用を受けるその年、その前年、その前々年に下記の居住用財産関係の特例制度の適用を受けていた場合には3,000万控除の適用はできません。

■特定の居住用財産の買換え(措置法36の2)
■特定の居住用財産の交換(措置法36の5)

7. 売主が一定の期間に住宅ローン控除の適用を受けていないこと

住宅ローン控除と3,000万控除の重複適用には一定の制限があります。

①過年度分の適用制限
3,000万円控除の適用を受ける場合には、下記期間に住宅ローン控除の適用を受けることはできません。
仮に、下記期間に住宅ローン控除の適用を受けていた場合において、3,000万控除の適用を受けたいときは、住宅ローン控除の適用をしない修正申告や期限後申告をする必要があります。逆に住宅ローン控除を適用したほうが有利の場合には3,000万控除の適用を諦めることとなります。

■令和2年3月31日以前に譲渡:その譲渡の年の前年、前々年(措置法36の2)
■令和2年4月1日以後に譲渡:その譲渡の年の前年、前々年、前々々年

①将来年度分の適用制限
3,000万円控除の適用を受ける場合には、適用年度、その翌年、その翌々年に住宅ローン控除の適用を受けることはできません。
言い方を変えると住宅ローン控除の適用を受ける年度(入居した年度)、その前年度、その前々年度に3,000万控除の適用を受けていた場合には、その入居した年以後10年間の各年度の所得税につき住宅ローン控除の適用ができないこととなります。

翌年の健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療保険料等に要注意

マイホームの3,000万円控除は、所得税や住民税の節税には繋がりますが、健康保険料、介護保険料、後期高齢者医療保険料の算定上は控除されません。
したがって、3,000万円控除後で譲渡所得がゼロとなった場合でも翌年の社会保険料は例年に比べ重い負担になることがあるので注意が必要です。

各社会保険料算定上の基礎となる所得金額の詳細は、社会保険料、高額療養費、介護サービス費、医療費の窓口負担割合等の基準となる所得金額等を徹底解説をご参照下さい。

相続税の申告手続き、トゥモローズにお任せください

相続税の手続きは慣れない作業が多く、日々の仕事や家事をこなしながら進めるのはとても大変な手続きです。

また、適切な申告をしないと、後の税務調査で本来払わなくても良い税金を支払うことにもなります。

税理士法人トゥモローズでは、豊富な申告実績を持った相続専門の税理士が、お客様のご都合に合わせた適切な申告手続きを行います。

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