【小規模宅地の特例】特定同族会社事業用宅地等を徹底解説
こんにちは。
相続税専門の税理士法人トゥモローズです。
小規模宅地の特例は、居住用と事業用に大きく2つに分けることができます。また、事業用については、特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等、貸付事業用宅地等の3つに分けることができます。
今回は、特定同族会社事業用宅地等について徹底的に解説します。
動画で知りたい人は下記YouTubeから、テキストで確認したい人はこのままスクロールして一番最後までお読みください!
※追記:
小規模宅地等の特例について、基本的な情報をわかりやすくまとめた記事を新たに作成いたしましたので、必要に応じて参考にしていただければと思います。
>>小規模宅地等の特例をわかりやすく解説。相続した土地にかかる相続税を最大80%減額
また、特定同族会社事業用宅地等が登場する案件は、死亡退職金も支給されることも多いです。
詳しくは、死亡退職金が支給された場合の相続税申告をわかりやすく徹底解説をご参照ください。
1. 要件
租税特別措置法第69条の4第3項第3号に下記の通り規定されています。
相続開始の直前に被相続人及び当該被相続人の親族その他当該被相続人と政令で定める特別の関係がある者が有する株式の総数又は出資の総額が当該株式又は出資に係る法人の発行済株式の総数又は出資の総数の10分の5を超える法人の事業の用に供されていた宅地等で、当該宅地等を相続又は遺贈により取得した当該被相続人の親族(財務省令で定める者に限る。)が相続開始時から申告期限まで引き続き有し、かつ、申告期限まで引き続き当該法人の事業の用に供されているもの(政令で定める部分に限る。)をいう。
簡単に要件を整理すると下記の2つになります。
① 被相続人、親族、特殊関係人が50%超保有する法人の事業の用(貸付事業を除く)に供されていた宅地等
② 宅地等を取得した親族が相続税の申告期限までその法人の役員であり、その宅地等を申告期限まで保有していること
また上記の条文には直接記載されていない隠れ要件として、
③ その同族会社が相当の対価で被相続人から土地又は建物を賃貸借していること
④ 建物等の所有者が、特定同族会社、被相続人又は生計一親族であること
という要件もありますので注意が必要です。
相当の対価の詳しい説明は、小規模宅地の特例における「相当の対価」について徹底的に解説しますを参照してください。
建物所有者と小規模宅地等の特例の詳しい説明は、【小規模宅地等の特例】被相続人の建物でなくても小規模宅地の特例は適用可能かをご参照ください。
2. 限度面積及び減額割合
特定同族会社事業用宅地等の限度面積は、特定事業用宅地等と併せて400㎡となります。
減額割合は、80%となります。
3. 添付書類
特定同族会社事業用宅地等の適用を受ける場合の添付書類は、下記の通りです。
□ 遺言書写し又は遺産分割協議書の写し
□ 相続人全員の印鑑証明書
□ 特定同族会社の定款の写し
□ 被相続人及び被相続人の親族その他被相続人と特別の関係がある者が特定同族会社の発行済株式等を50%超所有していたことを証明する書類(特例の対象となる法人が証明したものに限ります。)
※ 最後の書類については、定形の雛型はありませんので適宜会社で作成することになります。
4. Q & A
① 被相続人や生計一親族が役員でない場合
Q 租税特別措置法第69の4第1項は下記のように規定されていて、被相続人や生計一親族の経営している法人の事業の用でないと特例の要件を満たさないのではないかと考えてしまいます。被相続人や生計一親族がその法人の役員でない場合でも特定同族会社事業用宅地等に該当しますか?
「個人が相続又は遺贈により取得した財産のうちに、当該相続の開始の直前において、当該相続若しくは遺贈に係る被相続人又は当該被相続人と生計を一にしていた当該被相続人の親族の事業の用又は居住の用に供されていた宅地等~」
A 該当します。
被相続人や生計一親族が特定同族会社の役員であることという要件はありませんのでこれらの者が役員でない法人でも問題ありません。上記の規定における「事業の用」とは、被相続人等の貸付事業の用を指しており、被相続人等が特定同族会社に相当の対価で貸し付けていれば貸付事業の用に供していることになるので問題ございません。
② 被相続人が株を一切保有していない場合
Q 被相続人や親族等が50%超保有している法人との要件がありますが、被相続人も一部株を保有していないとダメですか?
A 被相続人は株を保有していなくても大丈夫です。
あくまで、被相続人及び親族等と規定されているため、被相続人がゼロでも親族等が50%超保有していれば特定同族会社に該当します。
③ 宅地と株の取得者が異なる場合
Q 特定同族会社事業用宅地等を相続した親族は、特定同族会社の株式も相続しないと特例の適用は受けれませんか?
A 適用可能です。
特定同族会社事業用宅地等の取得者と特定同族会社の株式の取得者が異なっていたとしても特定同族会社事業用宅地等の取得者が特定同族会社の役員であれば特例の適用は受けれます。
④ 申告期限までに株を売却した場合
Q 申告期限までに50%以下の保有割合になった場合でも特定同族会社事業用宅地等に該当しますか?
A 該当します。
特定同族会社に該当するかどうか、すなわち、被相続人、親族、特殊関係人で50%超保有している法人か否かは、相続開始直前で判定します。つまり、相続開始後申告期限までの間に第三者に株を譲渡して50%以下となってしまったとしても他の要件を充足していれば特定同族会社事業用宅地等に該当します。
⑤ 不動産貸付業を兼業している場合
Q 特定同族会社が卸売業と不動産貸付業を兼業しています。その会社の本社ビルの敷地は特定同族会社事業用宅地等に該当しますか?
A 該当します。
なお、本社ビルの敷地全体につき小規模宅地の特例の適用はできません。売上高や従業員数など合理的な方法で卸売業と不動産貸付業とで按分し、卸売業に係る面積についてのみ適用が可能です。
⑥ 社宅の場合
Q 社宅の敷地は特定同族会社事業用宅地等に該当しますか?
A 該当します。
特定同族会社の従業員のための社宅の敷地についても事業の用に供されている宅地等と認められるため特定同族会社事業用宅地等に該当します。ただし、被相続人等の親族のみが使用していた社宅については、特例の適用は出来ませんので注意が必要です。
⑦ 特定同族会社が建物を保有している場合
Q 特定同族会社所有の建物の敷地について、無償返還の届出を提出している場合には特定同族会社事業用宅地等に該当しますか?
A 無償返還の届出の有無に関係なく、相当の対価(相当の地代ではありません)による賃貸借であれば特定同族会社事業用宅地等に該当し、使用貸借であれば該当しません。
相当の対価については、「相当の対価」について徹底的に解説します!参照してください。なお、相当の対価に申告期限までの継続要件はありませんので、相続開始時点で相当の対価であれば、相続開始から申告期限までの間で相当の対価でなくなったとしても小規模宅地の特例の適用は可能となります。
⑧ 生計別親族が建物を保有している場合
Q 生計別親族が所有している建物を特定同族会社に賃貸していた場合には特定同族会社事業用宅地等に該当しますか?
A 特定同族会社事業用宅地等は特定同族会社、被相続人、生計一親族の所有している建物の敷地のみ適用可能です。
したがって、生計別親族所有の建物を特定同族会社の事業用として使用していたとしても特定同族会社事業用宅地等には該当しません。
⑨ 医療法人の場合
Q 医療法人(病院)の敷地については特定同族会社事業用宅地等に該当しますか?
A 持分の定めのある医療法人の場合には特定同族会社事業用宅地等に該当します。これに対して持分の定めのない医療法人の場合には該当しません。
医療法人の詳しい解説は、下記コラムをご参照ください。
医療法人の持分の相続についてわかりやすく徹底解説
医療法人の出資持分の相続税評価について徹底解説
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