家庭用財産(家財一式)の相続税評価をわかりやすく徹底解説!
みなさんこんにちは!
相続専門の税理士法人トゥモローズです。
家具、家電、衣服、自動車、貴金属、書画骨董、電話加入権等の家の中にある財産を家庭用財産や家財と言いますが、このような財産にも相続税がかかります。
今回は家庭用財産の種類ごとの相続税評価について解説します。
目次
家庭用財産の評価単位
家庭用財産には、家具、家電、衣服等、様々な種類の財産が存在します。
相続税申告上、このような財産をどこまで区分して個別に評価しなければならないのでしょうか?
テレビ、パソコン、机、絵画等一つ一つ評価していったらばそれだけで申告期限である10ヶ月が過ぎてしまいそうです。
そこで家庭用財産の評価単位(どこまで区分してそれぞれの財産を評価するかどうかの単位)が大切となるのです。
家庭用財産は、相続税の評価基準である財産評価基本通達上、原則として「一般動産」に該当します。
一般動産の評価単位は、下記の財産評価基本通達128に定められています。
財産評価基本通達128
動産(中略)の価額は、原則として、1個又は1組ごとに評価する。ただし、家庭用動産、農耕用動産、旅館用動産等で1個又は1組の価額が5万円以下のものについては、それぞれ一括して一世帯、一農家、一旅館等ごとに評価することができる。
上記通達を要約すると下記の通りです。
原則:1個又は1組ごとに評価
例外:1個又は1組の価額が5万円以下は一世帯ごとに評価
原則は、家具や家電ごとに個別評価をしないといけませんが、5万円以下のものについては、家財一式として家庭ごとに評価して良いとのことです。
したがって、個別に売却したら5万円を超えるような家財以外はまとめて評価ができるのです。
家庭用財産の評価方法
家庭用財産が相続税上、一般動産に該当するというのは前述の通りですが、一般動産の相続税評価は、下記の財産評価基本通達129に基づき評価します。
財産評価基本通達129
一般動産の価額は、原則として、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。ただし、売買実例価額、精通者意見価格等が明らかでない動産については、その動産と同種及び同規格の新品の課税時期における小売価額から、その動産の製造の時から課税時期までの期間(その期間に1年未満の端数があるときは、その端数は1年とする。)の償却費の額の合計額又は減価の額を控除した金額によって評価する。
上記通達を要約すると下記の通りです。
原則:売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価
例外(原則で評価できない場合のみ):相続開始時の未償却残高で評価
■原則
売買実例価額には、主に下記3通りの方法があります。
②類似の財産の売買実例価額を基とし、精通者意見価格等を参酌して評価額を求める方法
③類似の財産の売買実例価額に比準して評価する方法
一般動産は上記のうち②の方法を採用します。
ちなみに、①は上場株式や投資信託等で採用される評価方法で、③は非上場株式の類似業種比準方式で採用される評価方法です。
一般動産は元々「調達価額に相当する金額」で評価することとなっていました。平成20年の改正により、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する方法に改められました。
改正の趣旨としては、インターネット等の発達により納税者が売買実例価額等の情報を容易に入手できるようになったためです。
国税庁HP 平成20年4月7日「財産評価基本通達」(法令解釈通達)等の一部改正のあらまし(情報) 一般動産の評価
■例外
上記原則の売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する方法が困難な場合にこの例外的な方法で評価することができます。
相続開始時の未償却残高は下記算式により計算します。
なお、減価償却費の計算方法は、財産評価基本通達130に下記の通り定められています。
財産評価基本通達130
前項のただし書の償却費の額を計算する場合における耐用年数等については、次に掲げるところによる。
(1) 耐用年数
耐用年数は、耐用年数省令に規定する耐用年数による。(2) 償却方法
償却方法は、定率法による。
償却費の計算について、項目ごとに解説します。
◯ 耐用年数
耐用年数は耐用年数省令に規定されている耐用年数を採用しますが、耐用年数省令については、耐用年数省令をご参照ください。
なお、年の途中で耐用年数省令の改正があったとしても相続開始年の1月1日に施行されている耐用年数省令により計算します。
国税庁HP 質疑応答事例 償却費の額の合計額の計算
◯ 償却方法
償却方法は定率法によりますが、定率法の償却率については、定率法償却率をご参照ください。
上記リンク先の定率法償却率を確認するとわかる通り、定率法の償却率は直近で2回改正されていますが、その財産の取得時や製造時の償却率を使うのではなく、相続開始日に有効な償却率を使いますのでご注意ください。
国税庁HP 平成20年4月7日「財産評価基本通達」(法令解釈通達)等の一部改正のあらまし(情報) 一般動産等の評価における償却費の額の計算
◯ 経過年数
償却費計算にあたり、経過年数をカウントする必要がありますが、製造時から相続開始時までの経過年数をカウントします。カウントの始期が被相続人の取得日ではなく、その財産の製造時となりますので注意が必要です。
また、その経過年数に端数が生じた場合には納税者有利にすべて切り上げが可能です。月数按分はしませんので注意しましょう。
◯ 定率法未償却残額表
参考までに定率法の未償却残額をまとめた表が国税庁HPに公表されているので参考にしてみてください。
国税庁HP 定率法未償却残額表(平成24年4月1日以後取得分)
種類別家庭用財産の相続税評価
1.家具
タンス、ソファー、ベッド、机、椅子、本棚等、家の中にある家具は、一般動産に該当しますので前述の通りに、売買実例価額等又は未償却残高で評価します。
相続開始直前に数十万円で購入した家具や相続開始後に5万円超で売却した家具は、厳密には個別評価をすべきでしょう。
2.家電
テレビ、冷蔵庫、洗濯機、エアコン、ドライヤー、固定電話、携帯電話、パソコン、タブレット、携帯電話等の家の中にある電化製品も一般動産として評価します。
相続開始直前に数十万円で購入した家電や相続開始後に5万円超で売却した家電は、厳密には個別評価をすべきでしょう。
3.衣服
洋服、着物、鞄、靴等の衣服も一般動産として評価します。
5万円超の価値のあるブランド品、プレミアのついている服等は個別に評価すべきでしょう。
4.自動車
自動車も一般動産として評価します。
他の家庭用財産との違いは、原則的評価方法である売買実例価額や精通者意見価格が判明しやすいという点です。
すなわち、中古車市場の業者の買取価格相場、査定額等を調査してそちらをもって相続税評価とすることが多いです。
詳しくは、自動車(車両)の相続税評価を徹底解説をご参照下さい。
5.貴金属
ダイヤの指輪、パールのネックレス、金地金等の貴金属も一般動産として評価します。
貴金属も自動車と同様に、原則的評価方法である売買実例価額や精通者意見価格が判明しやすいため、それを専門に扱っている業者の買取価格をインターネット等で調査してその金額をもって相続税評価とします。
金の相続税評価の詳しい説明は、金地金、金の延べ棒、純金、純金積み立ての相続税評価を徹底解説をご参照下さい。
6.書画骨董
掛け軸、絵画、壺、陶磁器等の書画骨董の相続税評価は、下記の財産評価基本通達135に基づき評価します。
財産評価基本通達135
書画骨とう品の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。
(1) 書画骨とう品で書画骨とう品の販売業者が有するものの価額は、133≪たな卸商品等の評価≫の定めによって評価する。
(2) (1)に掲げる書画骨とう品以外の書画骨とう品の価額は、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。
販売業者が被相続人というケースはレアケースだと思うのでほとんどの案件が上記通達の(2)に該当すると思います。
すなわち、一般動産の原則的評価方法である売買実例価額、精通者意見価格等を使用して評価する方法です。
実務の現場では、美術商等に査定をしてもらった金額で評価する方法が一般的です。
7.電話加入権
家の固定電話しかない時代には電話加入権が価値のある財産でした。
1976年当時の電話加入権は80,000円でした。
NTTが設立された1985年においても72,000円をNTTに支払って電話加入権を設定してました。
現在の電話加入権の価格は、39,600円(消費税込)です。
実際の購入価格と異なり、電話加入権の相続税評価は、ここ10年くらい1本1,500円でした。
ただし、電話加入権の相続税評価は令和3年から改正されています。念の為、改正前と改正後の通達を確認してみましょう。
【改正前】令和2年以前の相続開始案件(財産評価基本通達161)
電話加入権の評価は、次に掲げる区分に従い、それぞれ次に掲げるところによる。
(1) 取引相場のある電話加入権の価額は、課税時期における通常の取引価額に相当する金額によつて評価する。
(2) (1)に掲げる電話加入権以外の電話加入権の価額は、売買実例価額等を基として、電話取扱局ごとに国税局長の定める標準価額によつて評価する。
【改正後】令和3年以降の相続開始案件(財産評価基本通達161)
電話加入権の価額は、売買実例価額、精通者意見価格等を参酌して評価する。
上記改正により、令和3年以降の相続開始案件は、家庭用財産一式に含めて評価して良いこととなりました。1,500円で個別評価をしないように注意が必要です。
相続税の申告手続き、トゥモローズにお任せください
相続税の手続きは慣れない作業が多く、日々の仕事や家事をこなしながら進めるのはとても大変な手続きです。
また、適切な申告をしないと、後の税務調査で本来払わなくても良い税金を支払うことにもなります。
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