経営セーフティ共済に加入した個人事業主が死亡したら|承継3か月・解約手当金
10秒でわかる この記事の要約
- 「亡くなった父が個人事業で経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)に入っていた」——。個人事業主である契約者が亡くなると、この共済は原則として死亡時に「みなし解約」となります。掛金納付月数が12か月以上であれば、相続人が法定の支給率による解約手当金を請求できます(12か月未満は解約手当金の支給はありません)。
- 本記事が扱うのは、共済契約者本人が個人事業主で、その個人事業主が死亡した場合です。共済契約者が法人の場合は、代表者が亡くなっても法人の共済契約は原則として存続し、代表者変更の届出を行うため、個人事業主の死亡によるみなし解約・相続とは異なります。
- まず押さえたいのは、経営セーフティ共済は取引先が倒産したときに無担保・無保証で借入れができる「貸付型」の制度で、小規模企業共済のような「死亡共済金」の給付はない点です。死亡時は、原則としてみなし解約による解約手当金を受け取ることになります。
- ただし、被相続人の事業を相続した相続人が要件を満たし、原則3か月以内に申し出て中小機構の承諾を得れば、契約を承継できます(この場合はみなし解約になりません)。本記事では、死亡時のみなし解約と承継、正しい支給率、5年の請求時効、必要書類、相続放棄・準確定申告の注意点までを、相続手続きを専門に扱う行政書士が整理します(所得税・相続税は税理士、争いは弁護士、登記は司法書士と連携します)。
まず「個人事業主か法人か」「承継するか・みなし解約か」を切り分ける
| 最初に確認する事項 | 確認する内容 |
|---|---|
| 契約者は個人事業主か法人か | 本記事は個人事業主本人の死亡が対象。法人は代表者死亡でも契約は存続(代表者変更届) |
| 事業を相続する人がいるか | 事業承継者が原則3か月以内に申出し、中小機構の承諾を得られれば契約を承継。いなければ相続人がみなし解約手当金を請求(掛金12か月以上のとき) |
| 死亡からの経過期間 | 承継の申出は原則3か月以内(超過は遅延理由書+中小機構の審査) |
| 掛金納付月数 | 死亡によるみなし解約の支給率(12か月未満0%・36か月以上100%) |
| 共済金貸付・一時貸付金・前納 | 掛金総額・解約手当金の精算に影響する |
| 請求権の時効 | 解約手当金請求権は行使できる時から5年で時効(法19条) |
「事業を継ぐ人がいないと、掛金はどうなるのか」「いつまでに、どこへ手続きすればいいのか」——。
個人事業主が経営セーフティ共済に加入したまま亡くなると、原則として死亡時にみなし解約となり、相続人が解約手当金を請求します。事業を継ぐ相続人がいる場合に限り、原則3か月以内の申出と中小機構の承諾によって契約を承継できます。「自由に承継か解約かを選べる」のではなく、原則はみなし解約で、要件を満たす事業承継者だけが承継を申し出られると理解してください。
なお、解約手当金の所得税(事業所得)・準確定申告・相続税評価は税理士、事業承継や共済契約の帰属に争いがある場合は弁護士、不動産や会社の登記は司法書士の領域です。承継の可否・加入資格・解約手当金の額・支給は中小機構が判断します。行政書士は、争いがない範囲で、戸籍に基づく相続関係資料の整理・中小機構所定の承継/解約書類の準備・登録取扱機関への提出準備を担い、これらの手続きを支援します。
本記事の対象|「個人事業主本人の死亡」(法人代表者の死亡とは別)
経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)は、取引先が倒産して売掛金などが回収できなくなったときに、無担保・無保証で共済金の借入れができる貸付型の制度で、独立行政法人中小企業基盤整備機構(中小機構)が運営しています。
「死亡共済金」はない——小規模企業共済との違い
最初の重要な注意点です。経営セーフティ共済は貸付型の制度で、契約者が亡くなっても遺族へ「死亡共済金(死亡一時金)」が支払われるわけではありません。退職・廃業時などに共済金を受け取れる小規模企業共済とは制度の性格が異なります。小規模企業共済の死亡時の請求は小規模企業共済の死亡時の請求の記事で解説しています。
本記事は「個人事業主本人が死亡した場合」を扱う
本記事が扱うのは、共済契約者本人が個人事業主で、その個人事業主が死亡した場合です。共済契約者が法人の場合は、法人代表者が亡くなっても法人の共済契約は原則として存続し、代表者変更の届出を行います。個人事業主の死亡によるみなし解約・相続とは扱いが異なります。個人事業主が亡くなったときの事業全体の相続は個人事業の相続の記事もあわせてご覧ください。
相続手続きの料金プランとサポート内容の全体像は、こちらにまとめています。
個人事業主が死亡すると「原則みなし解約」|承継は要件を満たす場合のみ
個人事業主である共済契約者が死亡すると、共済契約は原則として死亡時にみなし解約となります(中小企業倒産防止共済法7条4項)。掛金納付月数が12か月以上であれば、法定の支給率による解約手当金を相続人が請求でき(同法11条1項)、12か月未満の場合は解約手当金の支給はありません。ただし、被相続人の事業を相続した包括承継人が、加入資格などの要件を満たし、原則3か月以内に申し出て中小機構の承諾を得た場合は、共済契約を承継でき、みなし解約になりません(同法12条)。承継は、申し出れば自動的に認められるものではなく、中小機構の承諾が必要です。
| 死亡後の処理 | 内容 |
|---|---|
| 原則 | 個人事業主の死亡時にみなし解約となる |
| 承継を希望 | 事業を承継した相続人が、原則3か月以内に中小機構へ申し出る |
| 中小機構が承諾 | 契約・掛金納付月数・一定の義務を承継(みなし解約にならない) |
| 承継しない・承継不可 | 相続人がみなし解約による解約手当金を請求する(掛金12か月以上のとき。12か月未満は支給なし) |
| 請求を放置 | 解約手当金請求権は行使できる時から5年で時効により消滅 |
承継できるのは「事業を相続した人」だけ
承継の主な要件は次のとおりです。相続人が自由に選べる制度ではなく、要件を満たす事業承継者だけが申し出られます。
- 承継申出者が被相続人の事業を相続していること(共済契約だけを取得することはできません)
- 承継申出者が中小企業者であり、本制度の加入資格を満たすこと
- 共済金・一時貸付金・利息・違約金等の義務を引き受けること
- 中小機構の承諾が必要であること
相続人全員が共同で契約者になる制度ではないため、誰が事業と共済契約を承継するかを遺産分割などで整理します。(なお、個人事業の法人成りなどによる「事業の全部の譲受人」も承継事由になりますが、これは死亡による相続とは別の承継事由です。)遺産分割協議書の作り方は遺産分割協議書の作成の記事もご覧ください。
経営セーフティ共済に加入した個人事業主の死亡について、承継かみなし解約かの整理と中小機構への提出書類の準備・段取りを支えます。
東京・八丁堀の行政書士法人トゥモローズが、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)に加入した個人事業主の死亡に伴う相続手続きについて、戸籍に基づく相続関係資料の整理・中小機構所定の承継/解約書類(様式㊥403等)の準備・登録取扱機関への提出準備・手続き全体の段取りを、相続人からの委任と中小機構の取扱いに応じて支援します。初回相談では、契約者が個人事業主か法人か/事業の承継者/死亡日からの経過期間/掛金納付月数/共済金・一時貸付金/相続放棄の検討状況を確認し、契約承継か、死亡によるみなし解約手当金の請求かを整理します(承継の審査・解約手当金の支給は中小機構、所得計算・準確定申告・相続税評価は税理士、争いは弁護士、登記は司法書士と連携。全国オンライン相談・郵送に対応)。初回相談無料。
平日 9:00〜21:00 土日祝 9:00〜17:00
承継の手続き|死亡から3か月以内・中小機構の承諾・必要書類
期限は「死亡日から原則3か月以内」
事業を継いで契約を承継する場合は、事業を相続した人が、死亡日から原則3か月以内に、加入時の登録取扱機関(金融機関・委託団体)を通じて中小機構へ申し出ます。3か月を経過した場合は、遅延理由書の提出と中小機構の審査が必要になり、遅延理由書を出せば必ず承継が認められるわけではありません。承継の取扱いは中小機構「相続(個人事業主の死亡)」の案内で確認できます。
主な提出書類(承継)
- 契約承継申出書(様式㊥501)
- 掛金預金口座振替申出書(様式㊥105)※引落口座に変更がなくても必要
- 承継申出者の印鑑証明書(発行後3か月以内)・共済契約締結証書
- 承継申出者の戸籍謄本または法定相続情報一覧図/被承継者の死亡が分かる除籍謄本等
- 事業を相続したことを証する資料を求められる場合があります
- 登録取扱機関・振替口座を変更する場合は様式㊥204が必要となる場合があります
- 納税証明書・確定申告書・月間取引額の資料は、登録取扱機関で確認後に返却される提示書類です(事業をしていなかった人が相続により新たに個人事業主となり、死亡から3か月以内に申し出る場合は、これらの提示資料が不要とされています)
承継申出者自身も既に契約者の場合は「統合」
承継申出者が既に経営セーフティ共済の契約者である場合、両契約は統合して取り扱われます。掛金月額は合算されますが月額20万円が上限、掛金総額も合算され800万円を超える分は返還されます。契約期間・納付月数は古い契約を基準とし、両契約で一時貸付金を利用中の場合は一方を返済しないと承継できません。また、契約者同士の承継には経過期間による制限があり、承継事由の発生から1年半以上で追加審査、2年以上で承継手続不可となります(この1年半・2年の制限は「契約者同士の承継」に限られます)。戸籍の集め方は相続の戸籍収集の記事もご覧ください。
みなし解約の支給率・掛金総額・貸付金・前納金と、5年の時効
事業を継がない(または承継できない)場合は、相続人がみなし解約による解約手当金を請求します。死亡によるみなし解約の支給率は、任意解約とは異なり、次のとおりです。
| 掛金納付月数 | 死亡によるみなし解約の支給率 |
|---|---|
| 1〜11か月 | 0%(解約手当金の支給なし) |
| 12〜23か月 | 85% |
| 24〜29か月 | 90% |
| 30〜35か月 | 95% |
| 36か月以上 | 100% |
任意解約では40か月以上で100%ですが、死亡などのみなし解約は36か月以上で100%と、任意解約より高い支給率が設定されています。なお、「100%」は法律上の掛金総額の100%であり、払い込んだ掛金の累計額そのものとは限りません。また、掛金納付月数が12か月未満の場合は、解約手当金の支給はありません(同法11条1項)。
解約手当金は「2段階」で計算する
- 第1段階:納付した掛金から、共済金貸付額の10分の1や、償還遅延などにより償還・違約金へ充当された額を控除し、法律上の掛金総額を計算します。
- 第2段階:これに支給率を掛けた解約手当金から、未返済の共済金・一時貸付金・利息・違約金等が控除される場合があります。
前納した掛金の扱い
前納していても、掛金へ充当する月がまだ到来していない部分は、掛金納付月数・掛金総額には含まれません。この未充当の前納金は、解約手当金とは別に「過払い金」として返金されます。
死亡による解約手当金請求の必要書類
解約手当金の請求は、原則として登録取扱機関へ書面で提出します。主な書類は次のとおりです。
- 解約手当金請求書(様式㊥401)
- 解約手当金の支給を受ける権利を有することの書面(様式㊥403)
- 請求者が相続人であることが分かる戸籍謄本(法定相続情報一覧図による代替も可)
- 被相続人の死亡が分かる除籍謄本等・共済契約締結証書
- 請求者の印鑑登録証明書(発行後3か月以内)・振込先口座の通帳等の写し
- その他、中小機構が求める資料
「遺産分割協議書だけで請求できる」とは限りません。中小機構所定の様式㊥403を使用し、誰が受け取るかは相続人間で整理したうえで手続きします。
相続放棄を検討するなら、承継申出・請求・受領を先にしない
被相続人に借入や事業上の債務が多く、相続放棄を検討する場合は、注意が必要です。
放棄前にしてはいけないこと
相続放棄を検討している場合は、契約承継の申出・解約手当金の請求・解約手当金の受領や使用を先に行わないでください。これらは相続財産の処分にあたり、法定単純承認(相続を受け入れたとみなされること)と評価されるおそれがあります(民法921条)。共済契約や解約手当金請求権も相続財産に含まれるため、放棄するなら、まず事業全体の資産・負債を確認します。
3つの期限は別々に進む
- 承継の申出期限:死亡日から原則3か月以内
- 相続放棄の熟慮期間:自己のために相続の開始があったことを知った時から原則3か月以内(民法915条)
- 解約手当金請求権の時効:行使できる時から5年
承継するか、放棄するかを3か月以内に判断しきれない場合は、家庭裁判所へ相続の承認又は放棄の期間の伸長を申し立てることも検討します(裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」)。相続放棄の注意点は相続放棄は3か月以内の記事もご覧ください。
税務(所得税・準確定申告・相続税評価)と、専門家の役割分担
承継しない場合の解約手当金|原則として死亡年分の事業所得への計上を検討
中小機構の一般的な税務案内では、個人事業主の解約手当金は、解約時の事業所得へ算入するとされています。死亡によるみなし解約についても、通常は死亡時に解約手当金に関する権利が生じるため、死亡年分の準確定申告への計上を検討します。生命保険金や死亡退職金のような「みなし相続財産」ではなく、500万円×法定相続人数の非課税枠の対象にもなりません。
ただし、承継が承認された場合はみなし解約にならず、解約手当金も発生しません。また、死亡によるみなし解約を直接扱う国税庁の公表事例は確認できないため、承継申出中の取扱い、収入の計上時期、現金主義の特例については税理士へ個別に確認してください。なお、被相続人に所得税の申告義務がある場合は、相続人が原則として相続の開始を知った日の翌日から4か月以内に準確定申告を行います。準確定申告の進め方は関連解説(税理士法人トゥモローズ)「【準確定申告】申告期限は4カ月!」で解説されています。
相続税では「本来の相続財産」として確認
| 死亡後の処理 | 相続税上の確認 |
|---|---|
| 承継しない | 死亡時のみなし解約率と法定控除後の純額を基礎に解約手当金請求権を評価(掛金12か月未満は原則0円) |
| 契約を承継 | 承継する共済契約上の地位を評価する(直接的な国税庁公表事例は未確認) |
| 共済金・一時貸付金あり | 掛金総額の減額・未返済債務・控除額を反映する |
| 未充当の前納金あり | 解約手当金とは別の返還請求権として確認する |
承継しない場合は、死亡時のみなし解約率と法定控除後の純額を基礎に解約手当金請求権を評価します(掛金納付月数が12か月未満なら、解約手当金請求権の価額は原則0円です)。未充当の前納金は、解約手当金とは別の返還請求権として確認します。承継する共済契約上の地位の評価について直接的な国税庁の公表事例は確認できないため、金額が大きい場合は税理士法人で国税局等への照会要否を検討します。(なお、法人契約の任意解約等では解約手当金は益金となりますが、法人代表者の死亡は本記事の死亡相続手続とは異なります。)
役割分担
- 承継の可否・加入資格・解約手当金の額・支給:中小機構(登録取扱機関を経由)
- 所得税・準確定申告・相続税評価:税理士
- 事業承継・相続放棄・権利の帰属に争いがある場合:弁護士
- 不動産・会社の登記:司法書士
- 戸籍収集・相続関係資料の整理・承継/解約書類の準備・提出準備:行政書士
行政書士は、相続人間に争いがない範囲で、戸籍等の収集・相続関係資料の整理・相続人全員の合意に基づく遺産分割協議書や様式㊥403等の作成支援・中小機構所定の書類の準備を担い、承継の可否や解約手当金の支給を保証するものではありません。
加入の調べ方と、相続人・財産の整理
加入・掛金の手がかり
経営セーフティ共済の加入は、次のような資料が手がかりになります。
- 預金口座からの掛金の口座振替の記録
- 共済契約締結証書や中小機構・登録取扱機関からの通知
- 確定申告書・決算書の掛金の必要経費算入の記載(別表や明細書)
加入先が分からない場合でも、取引金融機関や委託団体(商工会議所・商工会・中小企業団体中央会など)、中小機構へ相続人として照会できます。財産全体の調べ方は相続財産の調べ方の記事もご覧ください。
相続人・分割の整理
誰が事業と共済契約を承継するか、または解約手当金を誰が受け取るかは、相続人全員で整理します。相続人の一部と連絡が取れない場合は相続人と連絡が取れない場合の記事、遺産分割の後に別の財産が判明した場合は遺産分割後に財産が見つかった場合の記事もご覧ください。
掛金の前納や、取引先倒産で共済金を借り入れている場合、一時貸付金の残高がある場合は、承継・解約のいずれでも精算に影響します。契約締結証書や中小機構の通知で、掛金納付月数・借入・前納の有無を確認してから方針を決めると安全です。
よくある質問(FAQ)
Q1. 法人の代表者が亡くなった場合も、みなし解約や相続になりますか?
A. いいえ。共済契約者が法人であれば、代表者が亡くなっても法人の共済契約は原則として存続します。個人事業主の死亡によるみなし解約・相続ではなく、法人の代表者変更の手続きを確認してください。みなし解約や相続人による解約手当金の請求が問題になるのは、共済契約者本人が個人事業主で、その個人事業主が亡くなった場合です。自分のケースがどちらかを、まず契約者の名義(個人か法人か)で確認しましょう。法人契約でも、解散や加入資格の喪失など別の事由でみなし解約になることはありますが、代表者個人の死亡とは切り分けて考えます。
Q2. 解約手当金の請求に期限はありますか?承継の3か月とは違うのですか?
A. 解約手当金の支給を受ける権利は、行使できる時から5年間行使しないと、時効により消滅します(中小企業倒産防止共済法19条)。これは、事業を継ぐ人が契約を承継するための「死亡日から原則3か月以内」という申出期限とは別の期限です。つまり、承継の3か月を過ぎても、みなし解約による解約手当金そのものは5年の時効までは請求できる、という関係になります。ただし、放置すると必要書類の収集が難しくなったり、税務の取扱いが複雑になったりするため、早めに登録取扱機関・中小機構へ連絡し、請求手続きを進めるのが安全です。
Q3. 事業を継ぐ相続人自身も、すでに経営セーフティ共済に加入しています。どうなりますか?
A. 承継する人が既に経営セーフティ共済の契約者である場合、両方の契約は統合して取り扱われます。掛金の月額は合算されますが月額20万円が上限で、掛金総額も合算され、800万円を超える部分は返還されます。契約期間や掛金納付月数は古いほうの契約を基準とし、両方の契約で一時貸付金を利用している場合は、一方を返済しないと承継できません。また、契約者同士の承継には経過期間による制限があり、承継の事由が生じてから1年半以上で追加の審査、2年以上で承継手続きができなくなります。統合後の掛金や貸付の扱いは、登録取扱機関・中小機構に確認してください。
Q4. 相続放棄を考えています。承継の申出や解約手当金の請求をしてもよいですか?
A. 相続放棄を検討している間は、契約承継の申出、解約手当金の請求、解約手当金の受領や使用を先に行わないでください。共済契約や解約手当金請求権も相続財産に含まれるため、これらを進めると相続財産の処分として法定単純承認と評価され、放棄できなくなるおそれがあります。承継の申出期限(死亡日から原則3か月)、相続放棄の熟慮期間(自己のために相続の開始があったことを知った時から原則3か月)、解約手当金請求権の時効(5年)は、それぞれ別に進みます。3か月で判断しきれない場合は、家庭裁判所へ相続の承認又は放棄の期間の伸長を申し立てることも検討し、実行の前に弁護士へ確認してください。
Q5. 掛金は満額戻りますか?死亡のときの支給率を教えてください。
A. 死亡によるみなし解約の支給率は、掛金納付月数に応じて、1〜11か月は0%(解約手当金の支給なし)、12〜23か月は85%、24〜29か月は90%、30〜35か月は95%、36か月以上は100%です。任意解約では40か月以上で100%ですが、死亡などのみなし解約は36か月以上で100%と、任意解約より高い支給率が設定されています。ただし、この100%は法律上の掛金総額に対する割合で、共済金の貸付けを受けていた場合は掛金総額から一定額が控除され、未返済の一時貸付金なども差し引かれます。実際に戻る金額は納付状況や借入で変わるため、請求前に登録取扱機関・中小機構で見込額を確認してください。
相続手続きの料金プランとサポート内容の全体像は、こちらにまとめています。
まとめ
個人事業主が経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)に加入したまま亡くなると、原則として死亡時にみなし解約となり、掛金12か月以上なら相続人が解約手当金を請求できます(法人代表者の死亡は法人契約が存続するため別扱いです)。この共済は貸付型で、小規模企業共済のような死亡共済金はありません。
事業を相続した相続人が要件を満たし原則3か月以内に申し出て中小機構の承諾を得れば承継できますが(申出だけで自動承継されるわけではありません)、承継しない場合はみなし解約の支給率(12か月未満は支給なし・36か月以上100%)で解約手当金を請求します。解約手当金は共済金貸付の10分の1控除などで計算し、未充当の前納金は別途過払い金として返金されます。解約手当金請求権は5年で時効(法19条)にかかる点にも注意します。
税務では、解約手当金は事業所得へ算入(みなし相続財産ではない)で、相続税では請求権や契約上の地位が本来の相続財産となります。被相続人に所得税の申告義務がある場合は、相続の開始を知った日の翌日から4か月以内に準確定申告を行います(死亡によるみなし解約の計上時期は国税庁公表事例がなく税理士へ確認)。相続放棄を検討するなら、承継申出・請求・受領を先に行わないこと(法定単純承認の問題)にも注意します。承継の審査・支給は中小機構、所得計算・相続税評価は税理士、争いは弁護士、登記は司法書士が担い、行政書士は戸籍収集・相続関係資料の整理・承継/解約書類の準備を、書類の面から支えます。
行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、経営セーフティ共済(中小企業倒産防止共済)に加入した個人事業主の死亡に伴う相続手続きについて、戸籍に基づく相続関係資料の整理・中小機構所定の承継/解約書類の準備・登録取扱機関への提出準備を、相続人からの委任と中小機構の取扱いに応じて支援します。解約手当金の所得計算・準確定申告・相続税評価は税理士法人トゥモローズと連携して対応します。
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税務の観点もあわせてご確認ください
本記事は、個人事業主が経営セーフティ共済に加入したまま死亡した場合の相続手続きを、相続を専門に扱う行政書士の実務目線でまとめたものです。解約手当金の事業所得計上・準確定申告、分割確定後の税額の是正など税務の観点については、税理士法人トゥモローズが公開している以下の記事もあわせてご確認ください(具体的な計算・申告は税理士へ)。
根拠法令・公的資料
- 中小企業倒産防止共済法7条4項(死亡等によるみなし解約。12条の承継があれば解約にならない)
- 同法11条1項(掛金納付月数12か月以上の場合の解約手当金)・11条3項4項(支給率による算定・法律上の掛金総額)・11条5項(未返済金等の控除)
- 同法12条(相続等による共済契約の承継。申出+中小機構の承諾)・19条(解約手当金請求権の5年時効)
- 同法施行令4条(任意解約・みなし解約・機構解約の支給率)/同法施行規則29条・30条(請求・支給)・33条〜35条(承継申出・3か月・承諾通知)
- 民法896条(相続の一般的効力)・915条(相続放棄の熟慮期間)・921条(法定単純承認)・939条(相続放棄の効力)
- 所得税法(解約手当金は事業所得の総収入金額)・準確定申告(相続開始を知った日の翌日から4か月)※計算・申告は税理士
- 参考:中小機構「共済契約の解約」「個人事業主の死亡による解約」「相続(個人事業主の死亡)」「契約内容の変更・承継」「様式一覧」、国税庁「事業所得の収入金額」「準確定申告」、裁判所「相続の承認又は放棄の期間の伸長」
