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遺産分割協議書が銀行で差し戻されたら|理由別の補正・再提出方法

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行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)

大塚 英司


10秒でわかる この記事の要約

  • 「相続の手続きのために作った遺産分割協議書を銀行に持って行ったら、受理されずに差し戻された」——。相続人全員で署名・押印した協議書が金融機関の窓口で通らないと、手続きが止まってしまいます。
  • ここで最も大切なのは、銀行で協議書が受理されないことと、遺産分割協議そのものが民法上無効であることは別問題だという点です。まず、①協議の成立・代理権に問題があるのか、②銀行独自の本人確認・提出形式だけが不足しているのかを切り分けます。
  • この記事は、すでに作成した遺産分割協議書が金融機関で差し戻されたケースに向けたものです(これから初めて作る方は遺産分割協議書の作成の記事をご覧ください)。対応は「訂正か全面作り直しか」の二択ではなく、添付差替え・銀行所定の相続届・補足確認書・追加協議書・訂正・作り直しなど複数あります。
  • 本記事では、切り分けの考え方、差し戻しの理由(形式面・内容面・権限・能力面)、理由別の対応、財産の記載の直し方、相続税の未分割との関係までを、相続手続きを専門に扱う行政書士が整理します(分け方に争いがある場合は弁護士、不動産登記は司法書士、相続税は税理士と連携します)。

まず「協議の問題か、銀行の事務要件か」を切り分ける

最初に確認する事項 確認する内容
協議の問題か、銀行の事務要件か 協議の成立・代理権に問題があるのか、本人確認・提出形式が不足しているだけか
相続人・代理権 相続人が漏れていないか、未成年者・被後見人・行方不明者に有効な代理人がいるか
実印・印鑑証明書 実印か、銀行の求める期限内の印鑑登録証明書か(期限は銀行ごとに異なる)
対象財産の特定 銀行が特定できる表示か(口座番号まで/「当行の預貯金すべて」で足りる場合も)
対応方法 添付差替え・銀行所定の相続届・補足確認書・追加協議書・訂正・作り直しのどれか
相続税への影響 事務要件だけの不足なら、税務上も当然に「未分割」とは限らない

銀行が遺産分割協議書を受理しなくても、遺産分割協議そのものが無効とは限りません。逆に、ある銀行が受理したからといって、協議の法的有効性まで保証されたわけでもありません。

まず、①協議の成立・代理権に問題があるのか、②銀行独自の本人確認・提出形式だけが不足しているのかを切り分けます。そのうえで対応を選びます。対応は、印鑑証明書等の差替え・銀行所定の相続届・補足確認書・追加協議書・既存協議書の訂正・全面作り直しの複数があり、原本を訂正する前に、金融機関へ「どの方法で受理されるか」を確認するのが安全です。

なお、相続人の間で「そもそもの分け方」に争いがある場合は弁護士、未成年者・成年被後見人・行方不明者がいる場合の代理人選任は家庭裁判所相続登記は司法書士相続税の申告・未分割の扱いは税理士の領域です。行政書士は、争いがない範囲で、戸籍に基づく相続関係の確認・遺産分割協議書の作成/訂正・金融機関へ提出する書類の準備を担い、これらの手続きを支援します。


銀行の「不受理」と、遺産分割協議の「無効」は別問題

差し戻しへの対処で最初に押さえるべきは、「銀行が受理しないこと」と「協議が無効であること」は別という点です。

協議の成立に、必ず書面・実印・印鑑証明が要るわけではない

遺産分割協議は、共同相続人全員の合意により成立します(民法907条)。民法上、協議の成立のために必ず書面を作ること・実印を押すこと・印鑑登録証明書を添えることまでが定められているわけではありません。これらは主に、銀行・法務局などが本人の意思や手続権限を確認するために求める実務上の提出形式です。

実際、金融機関の中には、遺言書も遺産分割協議書もない場合に、銀行所定の相続届に相続人全員が署名・実印で押印する方法を案内しているところもあり、遺産分割協議書が相続手続で常に必須の書類というわけではありません。

まず切り分ける——協議の問題か、事務要件か

したがって、差し戻されたら、次のどちらなのかをまず切り分けます。

  • 協議の成立・代理権に問題がある(相続人が漏れている、未成年者の代理に利益相反がある、分け方が未合意 など)
  • 銀行独自の本人確認・事務処理の要件を満たしていないだけ(印鑑証明書が古い、銀行所定の相続届がない、口座の特定が不足 など)

前者なら協議のやり直しや代理人選任が必要ですが、後者なら書類の追加・差替えで解決できることが多くあります。まずは金融機関に差し戻しの具体的な理由を確認してください。銀行預金の相続手続き全体は銀行預金の相続手続きの記事もご覧ください。


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差し戻しの理由は3分類|形式面・内容面・権限・能力面

差し戻しの理由は、大きく形式面・内容面・権限・能力面の3つに分かれます。自分のケースがどれかを見極めると、対応の見当がつきます。

形式面——実印・印鑑証明書・訂正の不備

認印だった、印影が印鑑証明書と一致しない、印鑑証明書が銀行の求める期限を過ぎている、訂正の仕方が不適切、といった提出形式の問題です。多くは書類の差替えや所定の方法での訂正で対応できます。

内容面——相続人の漏れ・合意を証明する書面の不足・特定不足・不一致

相続人が漏れている、相続人全員の合意を証明できる書面がそろっていない(一部の相続人の署名がない、別紙の遺産分割協議証明書が不足、代理人の権限を示す資料がない)、対象の預金が特定できない、戸籍や法定相続情報一覧図(戸籍収集の記事)と協議書が食い違う、といった中身の問題です(口頭その他の方法で合意が存在することと、銀行に提出する書面としての証明力が足りないことは分けて考えます)。

権限・能力面——「署名はあるが有効な代理権がない」

見落とされがちですが、誰が相続人を代理して協議したのか、その人に有効な権限があるかという問題です。署名者はそろっていても、代理権が有効でなければ協議は有効に成立しません。

区分 よくある問題 主な対応
未成年の子と親が共同相続人 親が子を代理して署名すると利益相反になる 家庭裁判所で特別代理人を選任(民法826条)
成年被後見人等が相続人 後見人も共同相続人だと利益相反になる 成年後見監督人がいれば監督人が代理、いなければ特別代理人を選任(被保佐人・被補助人は臨時保佐人・臨時補助人)
相続人が行方不明 他の相続人が勝手に署名している 不在者財産管理人を選任し、権限外行為許可を得る(民法28条)
相続開始後に相続人が死亡(数次相続) 亡くなった相続人の分をそのままにしている その相続人の承継者(次の相続人)を確認する
相続放棄者を相続人として記載 放棄した人を含めて協議している 相続放棄申述受理証明書等で相続人を整理する
遺言と協議書の不一致 遺言で取得者が指定・遺言執行者がいるのに、異なる内容の協議書を提出 遺言書・遺言執行者の権限・必要な当事者を確認し、弁護士等へ法的確認

親権者と未成年の子が共同相続人として遺産分割する場合は利益相反となるため特別代理人が必要です(特別代理人の記事)。相続人が行方不明のときは不在者財産管理人の選任と権限外行為許可が必要です(不在者財産管理人の記事)。相続放棄をした人がいる場合は相続放棄の記事もご覧ください。


受理されなかった遺産分割協議書について、書類の不整合を整理し、差替え・補足書面・追加協議書・作り直しのどれで解決できるかを確認します。

東京・八丁堀の行政書士法人トゥモローズが、金融機関で差し戻された遺産分割協議書について、差し戻し内容と書類(戸籍・協議書・印鑑登録証明書・銀行所定書類)の不整合の整理・合意済み内容の書面化・添付書類の差替え・補足確認書/追加遺産分割協議書の作成・金融機関へ提出する書類の準備・再提出の段取りを、相続人からの委任と各金融機関の取扱いに応じて支援します。初回相談では、①添付書類の差替えだけで足りるか、②銀行所定の確認書が必要か、③補足確認書で足りるか、④追加の遺産分割協議書が必要か、⑤協議書全体の作り直しが必要か、を整理します(ご相談時に、差し戻し通知・現在の協議書・戸籍・印鑑登録証明書・銀行所定の相続届/金融機関名/相続人の人数(未成年者・成年被後見人・海外居住者・行方不明者の有無)/遺言書の有無/対象財産の概算額をご用意いただくとスムーズです)。既存の遺産分割協議の法的有効性・相続資格・代理権・利益相反などに疑義がある場合は弁護士へ引き継ぎます(代理人選任は家庭裁判所、相続登記は司法書士、相続税は税理士と連携。全国オンライン相談・郵送に対応)。初回相談無料。

03-6280-5188

平日 9:00〜21:00 土日祝 9:00〜17:00


差し戻し後の対応|補正・作り直しの「二択」ではない

差し戻しへの対応は、「訂正印で補正」か「全面作り直し」かの二択ではありません。実務では、次のように複数の対応があり、理由に応じて選びます。

差し戻し後の対応 適するケース 相続人全員の再署名等
①添付書類だけ差替え 印鑑証明書が古い、戸籍不足、法定相続情報一覧図の不足 原則不要
②銀行所定の相続届・確認書を追加 協議内容は明確だが、銀行独自の様式が必要 銀行の指定による
③補足確認書を作成(内容は変えない) 支店の統廃合・口座番号の補足・包括条項に含まれることの確認 既存協議の内容と銀行の指定による
④追加の遺産分割協議書を作成(新たに取得者を決める) 後から判明した口座など、取得者を新たに決める その時点で当該財産の遺産分割権限を持つ者全員
⑤既存の協議書を訂正 財産内容に影響しない軽微な誤字 銀行指定の訂正方法による
⑥協議書を全面作り直し 相続人漏れ、取得者・金額・重要財産の変更、代理権不備 原則として全員が再関与

「補足確認書」と「追加の遺産分割協議書」は性質が違う

この2つは混同されがちですが、法的な性質が異なります。

  • 補足確認書は、すでに成立した分割内容を変えずに、統廃合前後の支店名をつなぐ・口座番号を補う・対象口座が「その他一切の財産」条項などに含まれることを確認する書面です。必要な署名者は、既存の協議内容と金融機関の指定によって異なります。
  • 追加の遺産分割協議書は、後から判明した預金について誰が取得するかを新たに決める書面です。この場合は、その時点で当該財産について遺産分割の権限を持つ者全員の合意が必要です(原相続人の一人が既に亡くなっているときは、その地位を承継した相続人等も加わります)。

民法907条は遺産の全部または一部の分割を認めているため、差し戻された特定の口座だけを対象に追加の協議書を作ることは可能で、すでに成立した他の財産の協議まで、毎回作り直す必要はありません。ただし、追加の協議書は「取得する相続人だけ」で作れるものではなく、その財産の分割権限を持つ者全員で協議する点に注意します。

原本を訂正する前に、受理される方法を確認する

軽微な誤記について訂正印による補正を受け付ける金融機関もありますが、二重線・訂正印・訂正文字数の記載、全相続人の押印の要否などは金融機関ごとに異なります。原本へ訂正を加える前に、①訂正印でよいか②誰の実印が必要か③補足確認書で代替できるか④銀行所定の相続届で補完できるかを確認してください。取得者・金額・取得割合・相続人・口座の帰属を変える場合は「誤記訂正」ではなく新たな合意になるため、原則として作り直しか追加協議書が必要です。なお、捨印は、銀行から具体的に求められた場合を除いて安易に押さないようにします(取得財産や取得者に関わる重要部分を、後から捨印だけで直す運用は避けます)。


実印・印鑑証明書の扱いと、海外相続人の署名証明

実印・印鑑証明書は「銀行の提出要件」——法律上の成立要件ではない

遺産分割協議は共同相続人全員の合意により成立し、民法上、協議の成立のために必ず実印・印鑑登録証明書が必要と定められているわけではありません。ただし、金融機関の相続手続では、相続人本人の意思と印影を確認するため、通常、協議書への実印押印と印鑑登録証明書の提出が求められます

必要な証明書の発行時期、原本提出の要否、銀行所定の相続届への押印要件は金融機関ごとに異なります。たとえば、印鑑登録証明書について「発行後6か月以内」、被相続人名義の借入れがある場合は「発行後3か月以内」など、独自の期限を設ける銀行があります。これは法律上一律の期限ではなく、あくまで銀行の提出要件です。また、相続登記に使う印鑑証明書の取扱いは銀行手続とは別なので、登記については司法書士または管轄法務局へ確認してください。

海外に住む相続人の署名証明(サイン証明)

海外在住の相続人が日本国籍者で、日本に印鑑登録がない場合は、日本の在外公館が発給する署名証明(サイン証明)を、印鑑登録証明書の代わりに利用できます。署名は原則として領事の面前で行います。

一方、外国籍の相続人については、原則として居住国の公証人や国籍国の大使館・領事館等による署名証明を利用します。金融機関によって、在留証明・住所証明・翻訳・公証・アポスティーユ等の要否が異なるため、証明を取得する前に確認してください。


財産の特定・記載漏れの直し方(法律上必須ではなく「最も確実」)

預貯金の書き方——「最も確実」なのは口座番号まで

預貯金は、金融機関名・支店名・預金の種別・口座番号まで記載するのが最も確実です。ただし、これらが遺産分割協議の民法上の一律の方式要件というわけではありません。「◯◯銀行に対する被相続人名義の一切の預貯金」のような包括的な記載で対象が明確になる場合や、銀行所定の相続届・補足確認書を追加することで手続きできる場合もあります。差し戻された銀行に、協議書の全面作り直しが必要なのか、補足書面で足りるのかを確認してください。

記載のない財産が後から出てきたら

協議書に書かれていない預金や財産が後から判明した場合は、その財産について、あらためて分割を決めて追加の遺産分割協議書を作ります。「その他一切の財産は誰々が取得する」という条項があれば対応できることもありますが、条項と個別条項が矛盾する場合、相続開始後に生じた家賃・配当・利息、名義財産や帰属に争いがある財産、受取人固有の財産などでは、銀行から追加協議書や相続人全員の確認書を求められることがあります。抜けを防ぐため、まず相続財産の調べ方の記事で財産を洗い出しておくと安心です。

相続人ごとに署名を集める「遺産分割協議証明書」

相続人が遠方・多数の場合は、相続人ごとに同一内容の「遺産分割協議証明書」を作成し、各相続人がそれぞれ署名・実印で押印する方法もあります(すべての証明書がそろって、初めて全員の合意内容を証明できます)。

不動産は「登記」の要件が別にあります。相続登記で不動産を特定するときは、住居表示ではなく登記事項証明書のとおりの表示(所在・地番・地目・地積など)が必要で、印鑑証明書の期限なども銀行とは別の基準です。登記の詳細は司法書士・管轄法務局に確認し、協議書の書き方は遺産分割協議書の作成の記事もご覧ください。

銀行の差し戻しと、相続税の「未分割」は別に考える

差し戻された=未分割、ではない

銀行で協議書が受理されなかったことだけで、相続税上も当然に「未分割」になるとは限りません。印鑑証明書の期限や銀行所定書類の不足など、銀行独自の事務要件だけが問題なら、遺産分割自体は成立している可能性があります。

これに対し、相続人全員の有効な合意がない、相続人漏れや代理権不備がある、取得者が確定していない場合は、相続税の申告上も未分割として扱う可能性があります。税理士に、協議成立の状況と差し戻しの理由を伝えて確認してください。

差し戻しの理由 相続税上の扱い(税理士に確認)
印鑑証明書の期限・銀行所定書類の不足など、事務要件だけの問題 遺産分割は成立している可能性→当然に「未分割」とは限らない
相続人漏れ・代理権不備・取得者未確定・分け方が未合意 未分割として申告する可能性(分割見込書の添付を検討)

実際に未分割で申告する場合

相続税の申告期限(自己のために相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月以内)までに分割が固まらない場合は、いったん法定相続分などで未分割のまま申告します。配偶者の税額軽減・小規模宅地等の特例を後から適用するには、期限内申告書へ「申告期限後3年以内の分割見込書」を添付しておくことが重要です。分割が確定した後は、税額が減る相続人は原則として分割の日の翌日から4か月以内に更正の請求を行い、分割の結果、取得額や税額が増える相続人は修正申告が必要です。未分割申告と分割見込書は関連解説(税理士法人トゥモローズ)「申告期限後3年以内の分割見込書の書き方」で解説されています。

「分割の成立」と「税務の添付書類」も別問題

遺産分割が民事上成立していることと、配偶者の税額軽減や小規模宅地等の特例に必要な税務上の添付書類がそろっていることも、別の問題です。たとえば配偶者の税額軽減では、配偶者の取得財産が分かる遺産分割協議書の写し等と、協議書に押印した相続人全員の印鑑登録証明書が必要です。銀行の差し戻しが単なる事務要件によるものでも、税務申告に使える証拠書類が整っているかは、別途税理士に確認してください。


再提出の進め方と、専門家の役割分担

複数の金融機関があるときは「共通の協議書+各行別の補足」

同じ協議書でも、金融機関ごとに印鑑証明書の期限の扱い・財産表示の求め方・相続届の様式が異なります。ある銀行で受理された協議書が別の銀行で差し戻されるのは、このためです。複数の金融機関がある場合は、協議書を共通の基礎書類とし、各金融機関独自の相続届・補足確認書・印鑑証明書等を個別に準備する方が効率的です。一行の独自要件だけを理由に、他の財産まで含む協議書全体を作り直す必要があるかは、慎重に判断してください。

再提出の段取り

  • 差し戻しの理由を具体的に確認する(協議の問題か、事務要件か)
  • 6つの対応(添付差替え・銀行所定書類・補足確認書・追加協議書・訂正・作り直し)から選ぶ
  • 必要書類(有効な印鑑証明書・戸籍・相続届など)をそろえる
  • 各金融機関の相続届と内容を合わせて、あらためて提出する

役割分担

内容 担当
差し戻し内容・書類不足の整理、合意済み内容の書面化 行政書士
協議の有効性・相続資格・代理権等の法的判断、紛争 弁護士
家庭裁判所への申立代理(特別代理人・不在者財産管理人等) 弁護士
家庭裁判所提出書類の作成・相続登記 司法書士
未分割申告・更正の請求・修正申告 税理士

行政書士が支援できるのは、差し戻し内容と書類(戸籍・協議書・印鑑登録証明書・銀行所定書類)の不整合を整理し、合意済みの内容を書面化する範囲です。一方、既存の遺産分割協議が法的に有効か、代理権が有効か、相続資格があるか、利益相反や無効・取消しの対象かといった法的判断は弁護士の領域で、疑義がある場合は弁護士へ引き継ぎます。また、行政書士は書類の作成・提出準備を支援しますが、金融機関の受理や払戻しそのものを保証するものではありません。相続人の一部と連絡が取れない場合は相続人と連絡が取れない場合の記事、遺産分割の後に別の財産が判明した場合は遺産分割後に財産が見つかった場合の記事もご覧ください。


よくある質問(FAQ)

Q1. 銀行で差し戻されたら、遺産分割協議は無効になったのですか?

A. いいえ、銀行が受理しないことと、遺産分割協議が無効であることは別問題です。遺産分割協議は共同相続人全員の合意で成立し、書面・実印・印鑑登録証明書は、主に銀行や法務局が本人の意思を確認するための提出形式です。差し戻しの理由が、印鑑証明書が古い、銀行所定の相続届がない、口座の特定が足りない、といった事務要件だけなら、協議そのものは有効に成立している可能性があります。一方、相続人が漏れている、未成年者の代理に利益相反がある、分け方が未合意といった場合は、協議のやり直しや代理人の選任が必要です。まずは差し戻しの理由が、協議の問題なのか、銀行の事務要件なのかを切り分けてください。

Q2. 遺産分割協議書がなくても、銀行所定の相続届だけで手続きできますか?

A. 金融機関によっては、遺言書も遺産分割協議書もない場合に、銀行所定の相続届へ相続人全員が署名・実印で押印する方法で手続きできることがあります。遺産分割協議書は、相続手続きで常に必須の書類というわけではありません。ただし、どの書類で受け付けるかは金融機関ごとに異なり、協議書の提出を求められることもあります。すでに協議書を作ってあるなら、その協議書に加えて銀行所定の相続届や補足確認書を出すことで、全面的な作り直しをせずに手続きできる場合があります。差し戻された銀行に、どの書類の組み合わせで受理されるかを具体的に確認してください。

Q3. 相続人に未成年者がいる場合は、どうすればよいですか?

A. 親権者と未成年の子が、ともに共同相続人として同じ遺産分割に参加する場合、親が子を代理すると利益が相反するため、そのままでは有効な協議になりません。家庭裁判所で子のために特別代理人を選任し、その特別代理人が子に代わって協議に加わります。子が複数いる場合は、原則として子ごとに別の特別代理人が必要です。この手続きを踏まずに親が子の分も署名した協議書は、銀行で差し戻される原因になります。未成年者がいる相続では、協議を始める前に特別代理人の選任が必要かどうかを確認してください。詳しくは特別代理人の記事もご覧ください。

Q4. 相続人が行方不明で連絡が取れません。協議はできますか?

A. 相続人が一人でも欠けた遺産分割協議は無効です。行方不明の相続人がいる場合は、家庭裁判所に不在者財産管理人の選任を申し立て、その管理人が遺産分割に参加します。管理人が実際に分割へ同意するには、家庭裁判所の権限外行為許可が必要です。ほかの相続人が行方不明者の分を勝手に署名した協議書は、当然に差し戻されます。長期間生死が不明な場合は失踪宣告という方法もあります。いずれも時間がかかるため、早めに家庭裁判所の手続きを検討してください。連絡が取れない相続人がいる場合の進め方は、相続人と連絡が取れない場合の記事もご覧ください。

Q5. 差し戻された特定の口座だけ、追加の協議書を作れますか?

A. 特定の口座だけを対象とする追加の遺産分割協議書を作ることは可能です。民法は遺産の全部だけでなく一部の分割も認めているため、後から判明した預金や差し戻された特定の口座についてだけ、追加の協議書を作れます。すでに成立している他の財産の協議まで、まるごと作り直す必要はありません。ただし、その預金について新たに取得者を決める場合は、その時点で当該財産の遺産分割の権限を持つ者全員が協議に参加し、署名・実印で押印します。預金を取得する相続人だけの署名では、遺産分割協議書にはなりません。原相続人の一人が既に亡くなっているときは、その地位を承継した相続人等も加わります。どの範囲の書面が必要かは、差し戻した銀行に確認してから作成すると、二度手間を防げます。


相続手続きの料金プランとサポート内容の全体像は、こちらにまとめています。

相続手続き、まるごとおまかせ。行政書士法人トゥモローズの相続手続きサポート

まとめ

作成済みの遺産分割協議書が金融機関で差し戻されたときにまず大切なのは、銀行の不受理と、遺産分割協議の無効は別問題だと理解し、①協議の成立・代理権の問題か、②銀行独自の本人確認・提出形式の不足かを切り分けることです。

差し戻しの理由は形式面(実印・印鑑証明・訂正)・内容面(相続人漏れ・財産の特定不足)・権限・能力面(未成年者の特別代理人、不在者財産管理人など)の3つに分かれます。対応は「訂正か作り直しか」の二択ではなく、添付差替え・銀行所定の相続届・補足確認書・追加協議書・訂正・作り直しから選び、原本を直す前に金融機関へ受理方法を確認します。

預貯金は口座番号まで書くのが最も確実ですが、包括的記載や銀行所定書類で足りる場合もあります。銀行の差し戻しだけで相続税上「未分割」になるとは限らず、実際に未分割なら分割見込書の添付と、分割確定後の更正の請求を検討します。分け方に争いがあれば弁護士、代理人選任は家庭裁判所、相続登記は司法書士、申告は税理士と連携し、行政書士は相続関係の確認・協議書の作成/訂正・金融機関提出書類の準備を、書類の面から支えます。

行政書士法人トゥモローズは、東京・八丁堀(東京メトロ日比谷線「八丁堀駅」徒歩3分)の事務所を拠点に、首都圏(東京・神奈川・埼玉・千葉)とオンライン(Google Meet・全国対応)で、受理されなかった遺産分割協議書について、差し戻し理由の切り分け、添付書類の差替え・補足確認書や追加協議書・協議書の訂正/作り直しの選定、金融機関へ提出する相続関係書類の準備を、戸籍に基づく相続関係の確認と各金融機関の取扱いに応じて支援します。相続税の未分割の扱いや税額の是正は税理士法人トゥモローズと連携して対応します。


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根拠法令・公的資料

  • 民法907条(遺産分割の協議。全部または一部の分割が可能)・909条(遺産分割の効力)
  • 民法826条(親権者と子の利益相反=特別代理人)・25条・28条・103条(不在者財産管理人・権限外行為の許可)
  • 戸籍法(相続人の範囲を証明する戸籍・除籍等)/不動産登記法・登記実務(相続登記での不動産の特定は登記事項のとおり)
  • 相続税法27条(申告期限=自己のために相続の開始があったことを知った日の翌日から10か月)・未分割申告と分割見込書 ※申告は税理士
  • 行政書士法(争いのない権利義務・事実証明に関する書類=遺産分割協議書等の作成)。分け方に争いがある場合の代理は弁護士、登記は司法書士

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この記事の執筆者:大塚 英司

行政書士法人トゥモローズ 代表行政書士(日本行政書士会連合会 登録番号 第18082222号)
税理士(東京税理士会新宿支部 登録番号 117702)

相続を専門に取り扱う行政書士・税理士。相続手続き・遺言・おひとりさま終活の実務に幅広く従事し、戸籍収集や遺産分割協議書の作成から、死後事務委任契約・任意後見契約といった生前対策の設計まで、ご相談者お一人おひとりの状況に応じて丁寧にサポートしている。