換価遺言(清算型遺贈)があった場合の課税関係を徹底解説!

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相続税申告

税務一般

みなさんこんにちは!
相続専門の税理士法人トゥモローズです。

換価遺言(清算型遺贈)があった場合には税金の取り扱いが非常に煩雑となります。
相続税、所得税、法人税と関係してくる税目も多岐にわたります。

今回は、換価遺言(清算型遺贈)があった場合に受遺者、遺贈の種類等別に解説していきます。

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1.相続人に対する遺贈

【具体例】
被相続人 A
相続人 長男B、長女C
遺産 土地のみ
遺言内容 
「土地を換金し、換金に要した費用、債務、葬式費用等を控除した残金を長男Bに1/2、長女Cに1/2の割合で相続させる」

(1)相続税

長男Bと長女Cに相続税が課税

①債務・葬式費用の控除

相続人であるため控除可能。
【相続税申告】債務控除をわかりやすく徹底解説
葬式費用で相続税の節税! 項目ごとに控除可否を一覧表示

②小規模宅地の特例

申告期限までの継続要件(所有、居住、事業)を満たせば適用可能。
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【小規模宅地の特例】売却したら適用できない?保有継続要件の解説

(2)所得税

長男Bと長女Cに譲渡所得税が課税

①取得費加算の特例

要件を満たせば適用可能
取得費加算の特例

②空き家特例

要件を満たせば適用可能
空き家3,000万円控除

2.相続人以外の個人に対する包括遺贈【相続人がいる場合】

【具体例】
被相続人 A
相続人 長男B、長女C
遺産 土地のみ
遺言内容 
「土地を換金し、換金に要した費用、債務、葬式費用等を控除した残金を内縁の妻Dに全額遺贈する。」
※相続人は遺留分侵害額請求はしていない。

(1)相続税

内縁の妻Dに相続税が課税

①債務・葬式費用の控除

内縁の妻Dは包括受遺者であるため控除可能。
【相続税申告】債務控除をわかりやすく徹底解説
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②小規模宅地の特例

内縁の妻Dは親族に該当しないため適用不可。
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(2)所得税

内縁の妻Dに譲渡所得税が課税

①取得費加算の特例

要件を満たせば適用可能(取得費加算の特例は取得者が相続人であることや親族であることが要件となっていない)
取得費加算の特例

②空き家特例

内縁の妻Dは包括受遺者のため適用可能(空き家特例は取得者が相続人であることや親族であることが要件となっていない)
空き家3,000万円控除

3.相続人以外の個人に対する特定遺贈【相続人がいる場合】

【具体例】
被相続人 A
相続人 長男B、長女C
遺産 土地、預金、有価証券、その他の財産
遺言内容 
「土地を換金し、換金に要した費用、債務、葬式費用等を控除した残金を内縁の妻Dに遺贈する。土地以外の財産は長男B、長女Cに2分の1の割合で相続させる。」

(1)相続税

長男B、長女C、内縁の妻Dに相続税が課税

①債務・葬式費用の控除

長男B、長女Cは相続人であるため控除可能。
内縁の妻Dは特定受遺者であるため控除不可。(負担付特定遺贈の場合には実質的に債務を控除できる)
【相続税申告】債務控除をわかりやすく徹底解説
葬式費用で相続税の節税! 項目ごとに控除可否を一覧表示

②小規模宅地の特例

内縁の妻Dは親族に該当しないため適用不可。
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(2)所得税

内縁の妻Dに譲渡所得税が課税

内縁の妻Dは特定受遺者であるため譲渡所得税の納税義務者は相続人とすべきとする説もあるが、換価代金を得ることができない相続人に譲渡所得税が課されるのは合理的ではないため実質所得者課税の原則に基づき内縁の妻Dに譲渡所得税が課税されると考えます。

①取得費加算の特例

要件を満たせば適用可能(取得費加算の特例は取得者が相続人であることや親族であることが要件となっていない)
取得費加算の特例

②空き家特例

内縁の妻Dは特定受遺者のため適用不可
空き家3,000万円控除

4.相続人以外の個人に対する包括遺贈【相続人がいない場合】

【具体例】
被相続人 A
相続人 なし
遺産 土地のみ
遺言内容 
「土地を換金し、換金に要した費用、債務、葬式費用等を控除した残金を内縁の妻Dに全額遺贈する。」

(1)相続税

内縁の妻Dに相続税が課税

①債務・葬式費用の控除

内縁の妻Dは包括受遺者であるため控除可能。
【相続税申告】債務控除をわかりやすく徹底解説
葬式費用で相続税の節税! 項目ごとに控除可否を一覧表示

②小規模宅地の特例

内縁の妻Dは親族に該当しないため適用不可。
小規模宅地等の特例をわかりやすく完全解説! 土地の金額が最大80%減額!

(2)所得税

内縁の妻Dに譲渡所得税が課税

①取得費加算の特例

要件を満たせば適用可能(取得費加算の特例は取得者が相続人であることや親族であることが要件となっていない)
取得費加算の特例

②空き家特例

内縁の妻Dは包括受遺者のため適用可能(空き家特例は取得者が相続人であることや親族であることが要件となっていない)
空き家3,000万円控除

5.相続人以外の個人に対する特定遺贈【相続人がいない場合】

【具体例】
被相続人 A
相続人 なし
遺産 土地、預金
遺言内容 
「土地を換金し、換金に要した費用、債務、葬式費用等を控除した残金を内縁の妻Dに遺贈する。」
※預金については遺言書に記載なし

(1)相続税

内縁の妻Dに相続税が課税

土地以外の財産については、特別縁故者がいる場合には特別縁故者に帰属し、いない場合には国庫に帰属します。
相続税の計算では、内縁の妻Dが取得した土地と特別縁故者に帰属した財産の合計額が課税価格を構成し、基礎控除は3,000万円となります。

①債務・葬式費用の控除

内縁の妻Dは特定受遺者であるため控除不可。(負担付特定遺贈の場合には実質的に債務を控除できる)
【相続税申告】債務控除をわかりやすく徹底解説
葬式費用で相続税の節税! 項目ごとに控除可否を一覧表示

②小規模宅地の特例

内縁の妻Dは親族に該当しないため適用不可。
小規模宅地等の特例をわかりやすく完全解説! 土地の金額が最大80%減額!

(2)所得税

本事例では、相続人と包括受遺者がいないため相続財産法人が成立し換価対象の土地の譲渡所得は相続財産法人に帰属することとなり、内縁の妻Dに譲渡所得は課税されません。
相続開始時点でみなし譲渡所得が発生し、その納税義務を相続財産法人が承継します。

6.相続人以外の法人に対する包括遺贈

【具体例】
被相続人 A
相続人 長男B、長女C
遺産 土地のみ
遺言内容 
「土地を換金し、換金に要した費用、債務、葬式費用等を控除した残金を株式会社Dに全額遺贈する。」
※相続人は遺留分侵害額請求はしていない。

(1)相続税

相続税の対象者はいない

相続税は個人に対してかかる税金であり、本事例では法人が全財産を取得しているため相続税の対象者は存在しません。
なお、株式会社Dに被相続人以外の個人株主がいて、当該遺贈により株式会社Dの株価が上昇した場合にはこの価値増加部分について被相続人から個人株主への遺贈があったものとみなされ相続税が課税される可能性はあります。

(2)所得税

被相続人Aに譲渡所得税が課税(準確定申告の納税義務は包括受遺者である株式会社Dが承継)

被相続人が法人に対して譲渡所得の基因となる財産を遺贈した場合には相続開始時点で時価により譲渡したものとみなされて被相続人に対して譲渡所得税が課税されます。
通常は当該譲渡所得の納税義務は相続人が承継しますが、本事例では相続人は財産を取得しておらず株式会社Dが包括受遺者に該当するため株式会社Dが被相続人の準確定申告の納税義務を承継します。

(3)法人税

株式会社Dは遺贈を受けた金額を受贈益として法人税が課税

上記(2)により納めた所得税は法人税上の損金に算入できます。
なお、相続開始時の時価と実際に換金した金額に乖離がある場合には法人税の対象になります。

7.相続人以外の法人に対する特定遺贈 遺言解釈その1:法人が土地そのものの遺贈を受けたと解釈する場合

【具体例】
被相続人 A
相続人 長男B、長女C
遺産 土地、預金、有価証券、その他の財産
遺言内容 
「土地を換金し、換金に要した費用、債務、葬式費用等を控除した残金を株式会社Dに遺贈する。土地以外の財産は長男B、長女Cに2分の1の割合で相続させる。」
遺言解釈
「法人は土地の換価代金ではなく土地そのものの遺贈を受けたと解釈する」

(1)相続税

遺贈対象となっている土地以外の財産について長男B、長女Cに相続税が課税

相続税は個人に対してかかる税金であり、株式会社Dは法人であるため相続税の対象者にはなりません。
株式会社Dに遺贈された土地については長男B、長女Cの相続税の課税価格を構成しません。

なお、株式会社Dに被相続人以外の個人株主がいて、当該遺贈により株式会社Dの株価が上昇した場合にはこの価値増加部分について被相続人から個人株主への遺贈があったものとみなされ相続税が課税される可能性があります。

(2)所得税

被相続人Aに譲渡所得税が課税(準確定申告の納税義務は相続人が承継)

被相続人が法人に対して譲渡所得の基因となる財産を遺贈した場合には相続開始時点で時価により譲渡したものとみなされて被相続人に対して譲渡所得税が課税されます。
特定受遺者は被相続人の準確定申告の納税義務を承継しないため相続人が納税義務を承継します。もちろん、承継した準確定申告にかかる所得税は相続税の債務控除の対象となります。

(3)法人税

株式会社Dは遺贈を受けた土地の時価につき受贈益として法人税が課税

相続開始時の時価と実際に換金した金額に乖離がある場合には法人税の対象になります。

8.相続人以外の法人に対する特定遺贈 遺言解釈その2:法人が土地売却代金の遺贈を受けたと解釈する場合

【具体例】
被相続人 A
相続人 長男B、長女C
遺産 土地、預金、有価証券、その他の財産
遺言内容 
「土地を換金し、換金に要した費用、債務、葬式費用等を控除した残金を株式会社Dに遺贈する。土地以外の財産は長男B、長女Cに2分の1の割合で相続させる。」
遺言解釈
「法人は土地そのものではなく土地の換価代金の遺贈を受けたと解釈する」

(1)相続税

遺贈対象となっている土地以外の財産について長男B、長女Cに相続税が課税

相続税は個人に対してかかる税金であり、株式会社Dは法人であるため相続税の対象者にはなりません。
株式会社Dに遺贈された土地については長男B、長女Cの相続税の課税価格を構成しません。

なお、株式会社Dに被相続人以外の個人株主がいて、当該遺贈により株式会社Dの株価が上昇した場合にはこの価値増加部分について被相続人から個人株主への遺贈があったものとみなされ相続税が課税される可能性があります。

(2)所得税

長男B、長女Cに譲渡所得税が課税

換価代金を得ることができない相続人に譲渡所得税が課されるのは合理的ではないとの考え方から株式会社Dが譲渡益相当の課税を受けるべきという説もあります。

(3)法人税

株式会社Dは遺贈を受けた換価代金を受贈益として法人税が課税

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この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は200件以上。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

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また、適切な申告をしないと、後の税務調査で本来払わなくても良い税金を支払うことにもなります。

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