相続税の節税にならない財産4選!買っても無駄!
・相続税の節税に向いてない財産は金・車・投資信託・暗号資産
・購入価額と相続税評価額に乖離がないため節税効果が期待できない
・金や暗号資産は相続後の売却でも所得税の負担が重い
・不動産や生命保険は評価額圧縮により大きな節税効果あり
・節税目的なら評価額と時価に差がある財産を選ぶべき
相続税の節税対策として様々な財産の購入を検討される方が多くいらっしゃいますが、実は節税効果がほとんど期待できない財産があることをご存知でしょうか。
今回は、相続税の節税には向いていない代表的な財産として、金・車・投資信託・暗号資産の4つについて詳しく解説します。
これらの財産に共通するのは、購入価額と相続税評価額との間に大きな差がないという点です。
一方で、不動産や生命保険のように評価額の圧縮効果が期待できる財産との違いも併せてご紹介します。
相続税の節税に向いてない財産とは
相続税の節税効果を判断する重要なポイントは、購入価額と相続税評価額の差です。
購入価額と相続税評価額が同等であれば、現金で保有していても財産を購入しても相続税負担は変わりません。
相続税の節税効果が期待できる財産は、以下の条件を満たしている必要があります。
– 購入価額よりも相続税評価額が低い
– 特例や非課税枠の適用がある
金(ゴールド)
金は相続税の節税には最も向いていない財産の一つです。
金の相続税評価方法
金の相続税評価額は、以下の計算式で算出されます。
計算式 | 相続開始日の業者買取価格(税込)× 保有グラム数 |
例えば、500gの金を保有していて、相続開始日の業者買取価格が1gあたり11,000円の場合、相続税評価額は11,000円×500g=550万円となります。
金の相続税評価の詳しい解説は、純金、金地金、金貨、金の延べ棒、純金積立の相続税評価を徹底解説をご参照ください。
金が節税に向いてない理由
①購入価額と評価額の乖離がほぼない
金の相続税評価額は相続開始日の市場価格に基づいて算定されるため、購入時の価格と相続時の評価額に大きな差が生まれません。
むしろ金価格の上昇により、購入価額よりも評価額が高くなるケースも多くあります。
②相続後の所得税負担が重い
金の売却時には譲渡所得(総合課税)として課税されます。
不動産や株式の譲渡所得ついては20%の分離課税とされていますが、金については総合課税の譲渡所得のため譲渡益が高額になれば最大55%の税負担となります。
– 所有期間5年以内:短期譲渡所得(全額課税対象)
– 所有期間5年超:長期譲渡所得(1/2が課税対象)
– 特別控除:年間50万円まで
– 総合課税:他の所得と合算して税率適用
相続で取得した金の売却では、被相続人の取得価額を引き継ぐため、相続人にとって大きな税負担となる可能性があります。
車(自動車)
車(自動車)も相続税の節税には不向きです。
自動車の相続税評価方法
自動車は相続税上「一般動産」として評価され、以下の方法で評価額を算出します。
1. 業者買取価格相場(最も一般的)
2. 売却代金
3. 査定額
4. 減価償却費控除額(例外的)
自動車の相続税評価の詳しい解説は、自動車(車両)の相続税評価を徹底解説をご参照ください。
車が節税に向いてない理由
自動車は購入直後から大幅に価値が下落します。
新車で300万円の自動車も、2年後には減価償却により200万円程度の評価となるケースが一般的です。
購入時の300万円が2年後に実際の価値が200万円になったとしても相続税評価も200万円で評価されてしまうため相続税の節税にはならないのです。
投資信託
投資信託も相続税の節税効果は期待できない財産です。
投資信託の相続税評価方法
投資信託の相続税評価額は、死亡日の基準価額で評価されます。
したがって、時価と相続税評価に差がないのです。
投資信託の相続税評価の詳しい解説は、投資信託の相続税評価方法と控除できる源泉徴収税額を徹底解説!をご参照ください。
これに対して、上場株式であれば下記の4つの価額のうち一番小さい数字を選択できます。
①相続開始日の終値
②相続開始日の月の終値の平均額
③相続開始日の前月の終値の平均額
④相続開始日の前々月の終値の平均額
死亡日の時価と相続税評価額を比べると相続税評価額のほうが低くなる可能性がある上場株式のほうが相続税の節税に向いていることがわかると思います。
暗号資産
暗号資産は相続税の節税にも向いてませんが、最悪のケースの場合、相続した金額以上の税負担になる可能性があるため最も注意しなければならない財産です。
暗号資産の相続税評価方法
暗号資産の相続税評価額は、死亡日の時価で評価されます。
したがって、時価と相続税評価に差がないのです。
暗号資産の相続税評価の詳しい解説は、【仮想通貨(暗号資産)に相続税はかかる!】評価方法・評価額まとめをご参照ください。
それ以上に深刻なのが相続後の所得税負担です。
暗号資産を相続した場合の税負担
具体例を用いて解説していきます。
被相続人 父
相続人 長男
遺産 ビットコイン 10億円のみ
ビットコインの取得費 1,000万円
【相続税】
約4.6億円((10億-3600万(基礎控除))×55%(相続税率)-7200万円)
もちろん相続税の納税ができないためビットコインをすべて売却したとします。
売却時の時価は相続時の時価と同じであったものとします。
【所得税・住民税】
所得税:約4.4億円((10億-1000万円(取得費))×45%(所得税率)-479.6万円)
住民税:約1億円((10億-1000万円(取得費))×10%(住民税率))
合計:5.4億円
※基礎控除等の諸控除は僅少のため無視して計算しています。
暗号資産を売却した場合の所得税は雑所得となり、他の所得と合算されて住民税も合わせて最大55%の課税となります。
ちなみに、雑所得なので譲渡所得で適用できる取得費加算の特例も使えません。
具体例の場合、結論として相続税と所得税・住民税の負担が約10億円です。
10億円もの遺産を相続したのに税負担により手残りがゼロになるという試算です。
もっと金額が大きくなったり、兄弟姉妹の相続であったり、売却時の時価が相続時の時価に比べ暴落した場合などは相続した金額より税負担が大きくなり相続人の財産から負担しないと行けない場合もあり得ます。
暗号資産の相続に伴う税負担の詳しい解説は、ビットコインの相続で110%課税?!をご参照ください。
節税効果のある財産との比較
一方で、不動産や生命保険は相続税の節税効果が期待できる代表的な財産です。
不動産による節税効果
不動産は路線価評価により、時価の約8割で評価されます。
– 土地:路線価評価(時価の約80%)
– 建物:固定資産税評価額(時価の約70%)
– 賃貸物件:さらに2~3割の評価減
– 小規模宅地の特例:最大80%の評価減
例えば、1億円の現金で1億円の賃貸不動産を購入した場合、相続税評価額は約5,000万円程度まで圧縮される可能性があります。
不動産の相続税評価の詳しい解説は下記コラムをご参照ください。
相続税の土地評価 これだけ読めば大丈夫! 評価方法をわかりやすく解説
家屋(建物)の相続税評価額を徹底解説
また、小規模宅地等の特例について詳しくは、小規模宅地等の特例をわかりやすく徹底解説!をご参照ください。
生命保険による節税効果
生命保険には非課税枠が設けられており、大きな節税効果が期待できます。
項目 | 内容 |
非課税枠 | 500万円×法定相続人の数 |
適用例 | 相続人3人の場合:1,500万円まで非課税 |
その他効果 | 遺産分割の対象外、納税資金の確保 |
生命保険についての詳しい解説は、下記コラムをご参照ください。
生命保険金にかかる相続税 非課税枠と注意点を完全解説
相続税における生命保険金(死亡保険金)と保険金受取人の関係を徹底解説
【生前対策には生命保険が効果的】生命保険で節税する方法を詳しく解説!
Q&A よくある質問
Q:金投資は全く意味がないのでしょうか
相続税の節税という観点では効果は期待できませんが、インフレヘッジや資産の分散投資としての意味はあります。ただし、相続後の所得税負担も考慮して判断することが重要です。
Q:車を購入すれば必ず評価額が下がりますか
新車は購入直後から価値が下落するため評価額は下がりますが、その分実際の財産価値も減少しています。節税効果よりも実質的な損失の方が大きくなる可能性があります。
Q:投資信託でも節税効果がある場合はありませんか
投資信託は時価評価のため、基本的に節税効果は期待できません。運用成果によっては元本割れのリスクもあり、節税目的での投資は推奨されません。
Q:不動産投資のリスクはありませんか
不動産投資には空室リスクや価格下落リスクなどがありますが、相続税の観点では評価額の圧縮効果が期待できます。投資判断は総合的に検討することが重要です。
Q:生命保険の加入年齢に制限はありますか
一時払い終身保険では、医師の診断や告知不要で90歳まで加入できる商品もあります。ただし、健康状態や年齢によって加入条件が異なるため、事前の確認が必要です。
まとめ
相続税の節税を考える際は、購入価額と相続税評価額の関係を正しく理解することが重要です。
金・車・投資信託・暗号資産は、いずれも購入価額と相続税評価額に大きな乖離がないため、節税効果は期待できません。特に金については、相続後の所得税負担も重く、二重の税負担となるリスクがあります。
一方で、不動産や生命保険は評価額の圧縮効果や非課税枠の活用により、大きな節税効果が期待できます。
効果的な相続税対策を行うためには、各財産の特性を理解し、評価額と時価に差がある財産を選択することが重要です。
相続税対策は個々の状況により最適な方法が異なるため、専門家にご相談いただくことをお勧めします。
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