フランスの相続手続き|公証人制度と税務の注意点

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国際相続

10秒でわかる この記事の要約
①フランスの相続手続きは公証人が主導し申告期限は死亡から6か月以内と日本より早い
②フランスの相続税は取得者ごとの累進課税で最高45%に達する
③EU相続規則により準拠法は原則として被相続人の最後の常居所地法になる
④日仏間に相続税条約はないため二重課税は外国税額控除を中心に調整する
⑤配偶者とPACSのパートナーはフランス相続税が原則として非課税である

フランスに不動産や金融資産を持つ日本人、またはフランス在住の日本人が亡くなった場合、日本とは大きく異なる相続手続きが必要になります。

特にフランスでは、公証人が相続の中心的な実務を担い、相続税の申告期限も日本より短く、しかも日仏間には相続税条約がありません。
そのため、フランスの手続きを待ってから日本の申告準備を始めるのでは遅くなることがあります。

結論からいうと、フランス相続では、公証人を軸にした現地手続と、日本の相続税申告を同時進行で設計することが重要です。
特に、フランス不動産、フランスの生命保険、夫婦財産制、遺留分、EU相続規則の影響は、日本の相続の感覚だけでは整理しきれません。

この記事では、フランスの公証人制度を中心とした相続手続きの流れ、日本の相続税との関係、フランス特有の遺留分や夫婦財産制までを実務目線で解説します。

準拠法の全体像は、国際相続があった場合の準拠法も先に確認しておくと理解しやすくなります。

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目次

フランスの相続手続きは公証人が主導する

フランス相続で日本と最も違うのは、公証人が手続全体を主導する点です。

フランスの公証人は、日本の公証人のように遺言作成だけを扱う存在ではありません。
相続人の確認、財産調査、相続証明書の作成、相続税申告、不動産の名義変更、遺産分割証書の作成まで、相続実務全体に深く関与します。

フランスに不動産が含まれる相続では、公証人の関与が実務上ほぼ不可欠です。

フランスの公証人が担う主な役割

① 相続人の確認

② 遺言の有無と内容の確認

③ 財産と債務の調査

④ 相続証明書の作成

⑤ 相続税の申告支援

⑥ 不動産の名義変更と遺産分割証書の作成

フランスの公証人制度の存在を前提に動かないと、相続人同士で勝手に分ければ終わると思い込み、初動を誤りやすくなります。

フランスの相続税は取得者ごとに累進課税される

フランスの相続税は、遺産全体に一律でかかる仕組みではなく、相続人ごと・取得額ごとに課税される方式です。
日本の相続税と考え方が似ている部分もありますが、控除額や税率はかなり異なります。

子が相続する場合の税率

直系卑属に対する主な税率

8,072ユーロ以下:5%

8,072ユーロ超〜12,109ユーロ以下:10%

12,109ユーロ超〜15,932ユーロ以下:15%

15,932ユーロ超〜552,324ユーロ以下:20%

552,324ユーロ超〜902,838ユーロ以下:30%

902,838ユーロ超〜1,805,677ユーロ以下:40%

1,805,677ユーロ超:45%

子1人あたりの基礎控除は100,000ユーロです。
兄弟姉妹や第三者になると税率はさらに重くなり、非親族では60%に達することもあります。

つまり、フランスの相続税は、配偶者や子には比較的手厚い一方で、近親者以外への承継にはかなり重い制度です。

配偶者とPACSのパートナーは相続税が原則非課税

フランス法では、配偶者への相続は原則として相続税がかかりません。
これは日本の「1億6,000万円又は法定相続分まで」という配偶者の税額軽減よりも、税制上は強い優遇です。

また、PACS(Pacte civil de solidarité、連帯市民協約)のパートナーも、相続税については配偶者と同様の非課税扱いになります。

フランスでは、配偶者は原則として相続税がゼロになる一方で、子には通常どおり相続税がかかるという構造です。

そのため、一次相続では税負担が軽くても、二次相続で一気に税負担が重くなることがあります。

EU相続規則では準拠法は最後の常居所地法が原則になる

フランスを含む欧州連合では、相続の準拠法についてEU相続規則が大きな影響を持っています。

この規則では、原則として被相続人の死亡時の最後の常居所地法が準拠法になります。
そのため、日本人であっても、フランスに長期居住して最後の常居所地がフランスと判断されれば、フランス法が準拠法として問題になることがあります。

つまり、日本国籍であることだけを理由に、日本法で相続が進むと決めつけるのは危険です。

本国法選択という考え方もある

EU相続規則では、遺言で自分の国籍国の法律を準拠法として選ぶことができます。
日本人なら、日本法を準拠法として選択する余地があります。

ただし、これで全てが解決するわけではありません。
フランスで実際に手続を進める以上、公証人やフランス側実務との整合を取らなければならず、遺留分や手続の現場でなお論点が残ることがあります。

フランスの遺留分は子を強く保護する

フランス相続を考えるうえで避けて通れないのが、遺留分です。

フランスでは、子がいる場合、その子たちは「留保分」を持つ相続人として強く保護されます。
遺言で自由に処分できる部分は、日本以上に制約される場面があります。

子がいる場合の留保分の目安

子1人:遺産の2分の1

子2人:遺産の3分の2

子3人以上:遺産の4分の3

ここで重要なのは、現在のフランスでは配偶者は留保分権利者ではないという点です。
そのため、「子なし・配偶者のみなら配偶者の遺留分が4分の1」という整理は正確ではありません。子がいない場合、配偶者は法定相続人として大きな権利を持ちますが、留保分の整理とは別問題です。

国際相続における遺留分の違いは、国際相続の遺留分を徹底解説もご参照ください。

フランスの相続手続きは日本より期限が短い

フランス国内で死亡した場合、相続税申告期限は原則として死亡から6か月以内です。
フランス国外で死亡した場合は通常12か月以内です。

日本の相続税申告期限は原則10か月です。
つまり、被相続人がフランスで亡くなった案件では、フランス側の期限の方が日本より早いことになります。

フランス相続では、日本の10か月だけを基準に動くと間に合わないことがあります。

スケジュール管理の全体像は、国際相続スケジュール|発生から申告まで時系列で解説をご参照ください。

相続証明書の取得と翻訳・認証が実務の出発点になる

フランスで相続手続きを進めるためには、公証人が相続証明書を作成する流れが中心になります。

日本人の相続では、日本の戸籍謄本や除籍謄本、婚姻関係資料などをフランス側へ提出しなければならず、フランス語への法定翻訳やアポスティーユが必要になります。
また、日本法の内容をフランス側の実務家に説明するため、慣習証明書の作成が問題になることもあります。

翻訳・公証・認証の実務は、相続で必要な翻訳・公証・認証手続きを完全解説をご参照ください。

フランスの生命保険は日本と同じ感覚で扱わない方がよい

フランスでは生命保険が相続と切り分けて扱われる場面があります。
受取人指定や拠出時期によって、相続財産そのものとは異なる扱いになることがあります。

しかし、日本の相続税では、被相続人が保険料を負担していた生命保険金は、原則としてみなし相続財産として課税対象になる可能性があります。
つまり、フランスでの扱いと、日本での扱いは必ずしも一致しません。

フランスで相続財産に入らない生命保険でも、日本では相続税の対象になることがある点に注意が必要です。

フランスの夫婦共有財産制は日本の相続税にも影響する

フランスの法定夫婦財産制は、後得財産共有制です。
婚姻後に取得した財産は共有財産として扱われるのが基本です。

そのため、一方が亡くなったときには、まず共有財産の半分が生存配偶者の持分として切り分けられ、残り半分が相続財産になります。
この構造を無視して「全部が被相続人の財産」と考えると、日本の相続税申告でも誤ります。

つまり、日本の相続税申告でも、フランスの夫婦財産制を踏まえて、どこまでが遺産に入るのかを整理しなければなりません。

フランスの銀行口座も相続では凍結・手続が必要になる

フランスの銀行口座は、被相続人の死亡が確認されると凍結されることがあります。

口座の払戻しや解約には、公証人が作成する相続証明書が必要になるのが通常です。
日本から手続を進める場合は、委任状の整備やフランス語への翻訳、現地公証人との連携が問題になります。

少額の葬儀費用等を除き、口座残高の大部分は相続証明書が整うまで動かせないことが多いです。

海外銀行口座の相続手続全般は、海外銀行口座の相続解約で失敗しない!も参考になります。

日仏間に相続税条約はない

日本とフランスの間には、所得税条約はあります。
しかし、相続税に関する条約はありません。

そのため、フランスで相続税が課され、日本でも相続税が課されると、二重課税の調整は国内法ベースで行うことになります。

日仏間に相続税条約がないため、二重課税の完全調整ができるとは限りません。

日本居住者はフランス財産も日本の相続税の対象になり得る

フランスで相続税を払っても、日本の相続税の納税義務がある場合は、日本でも相続税申告が必要です。

つまり、フランスで税金を払ったから日本では終わり、にはなりません。
日本では、日本のルールでフランス財産を評価し、日本円換算し、外国税額控除を検討します。

外国税額控除は、外国で払った税額をそのまま全額引けるわけではありません。
日本の相続税額のうち、フランス財産に対応する部分が上限になります。

外国税額控除の仕組みは、相続税の外国税額控除をわかりやすく徹底解説をご参照ください。
日本の納税義務判定は、国際相続における相続税の納税義務の判定を徹底解説!もあわせて確認してください。

フランス不動産は日本円換算のうえ時価評価する

日本の相続税申告では、フランス不動産も日本円に換算したうえで時価評価しなければなりません。

外貨建て財産の邦貨換算

外貨建て財産は、被相続人の死亡日の対顧客直物電信買相場で日本円に換算します。
債務は対顧客直物電信売相場で換算します。

邦貨換算の詳しい考え方は、【相続税申告】 外貨建て財産、債務の邦貨換算を徹底解説をご参照ください。

海外不動産の評価

フランス不動産は、日本の路線価方式や倍率方式では評価できません。
現地の不動産鑑定や売買実例をもとに、日本の相続税の時価として整理する必要があります。

この点は、海外不動産の相続税評価の方法と注意点をご参照ください。

SCIによる不動産保有は相続対策になるが日本税務では別論点が生じる

フランスでは、不動産をSCI(Société Civile Immobilière、民事不動産会社)を通じて保有することがあります。
この場合、相続や贈与の設計に柔軟性が出る一方、日本側では「不動産そのもの」ではなく「持分」として評価する問題が生じます。

つまり、フランス側では便利でも、日本側では評価方法が複雑になることがあります。
日本の相続税まで見据えるなら、フランスだけの目線で組まない方が安全です。

生前贈与はフランスでは15年単位で考える

フランスの生前贈与は、日本より長い期間で設計するのが特徴です。
子への基礎控除は15年ごとにリセットされるため、長期で段階的に贈与する設計が一般的です。

ただし、日本居住者が絡む場合は、日本の贈与税も別途問題になります。
フランスだけで節税できても、日本で別の税負担が出ることがあるため、両国を見て設計しなければなりません。

海外財産は把握される前提で考えるべき

フランスの銀行口座や金融資産も、CRS(共通報告基準)により日本の税務当局に共有され得ます。

そのため、「フランスの口座なら日本では分からない」と考えるのは危険です。
海外財産は最初から把握される前提で、正しく申告する方が安全です。

この点は、CRS(共通報告基準)と相続もご参照ください。

国際相続は申告期限から逆算して動くべき

フランスの相続では、公証人手続、相続証明書、翻訳、公証、認証、不動産評価などに時間がかかります。

フランス国内での死亡なら6か月、日本の相続税は10か月が原則期限です。
どちらの期限にも間に合うよう、相続開始後すぐに両国の手続を同時進行で進めるべきです。

フランス財産がある相続では、相続開始後すぐに現地手続と日本の申告準備を同時進行で進めるべきです。

よくある質問(FAQ)

Q. フランスの配偶者相続は本当に全額非課税なのか?

A. 原則として非課税です。PACS(連帯市民協約)のパートナーも同様に非課税扱いになります。

Q. 日本人がフランスに住んで亡くなったら必ずフランス法になるのか?

A. 原則として最後の常居所地法が問題になりますが、遺言で日本法を選択する余地があります。ただし、それで全論点が解決するとは限りません。

Q. フランスで相続税を払えば日本では終わるのか?

A. 終わりません。日本の納税義務があれば日本でも相続税申告が必要で、外国税額控除を検討することになります。

Q. フランスの生命保険は日本でも非課税か?

A. 必ずしもそうではありません。フランスでの扱いと日本の相続税の扱いは一致しないことがあります。

まとめ

まとめ

フランス相続では、公証人主導の手続と日本より短い期限を前提に動く必要がある。

フランスの相続税は配偶者には非課税だが、子や第三者には高率の相続税がかかり得る。

EU相続規則により、日本人でもフランス法が準拠法になる可能性がある。

日仏間に相続税条約はないため、日本では外国税額控除を中心に二重課税を調整することになる。

フランス財産がある相続では、公証人手続と日本の相続税申告を同時進行で進めることが実務上最も重要である。

税理士法人トゥモローズでは、国際相続に強い税理士が、フランス財産を含む相続税申告、準拠法の整理、海外不動産評価、外国税額控除の確認まで一貫してサポートしています。

「フランス不動産を相続したが何から始めればよいか分からない」
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フランスの相続手続き|公証人制度と税務の注意点の写真

この記事の執筆者:熊野 翔一

東京税理士会所属
登録番号:148477

相続専門である税理士法人トゥモローズの所属税理士。相続税に馴染みのないお客様へ向けて、『理解しやすい言葉選び』を心がけてコンテンツを作成しております。『謙虚に、素直に、誠実に』を座右の銘に、申告業務にも取り組ませていただいております。

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