ニュージーランドの相続手続き|遺言検認と税務

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国際相続

10秒でわかる この記事の要約
①ニュージーランドには現在相続税・遺産税がない
②遺言がある場合はプロベート、遺言がない場合は管理命令が中心になる
③日本居住者がニュージーランド財産を相続すると日本の相続税申告が必要になることがある
④ニュージーランド不動産は外国人取得規制があるため相続後の保有や売却も確認が必要になる
⑤事実婚パートナーや夫婦共有財産の制度が日本の相続実務に影響することがある

ニュージーランドは移住先・投資先として日本人にも人気があります。

その一方で、ニュージーランドに不動産や銀行預金、年金資産を持つ方が亡くなった場合の相続は、日本国内の相続とは進め方が大きく異なります。
特に、プロベート、事実婚パートナーの扱い、夫婦財産分与制度、不動産の外国人取得規制などは、日本の感覚だけで判断すると誤りやすい論点です。

結論からいうと、ニュージーランド相続では、相続税がないことよりも、どの手続を経て財産を引き継ぐか、日本の相続税をどう申告するかを同時に設計することが重要です。
特に日本居住者が相続人になる場合は、ニュージーランド側の手続が終わるのを待たず、日本の相続税申告期限を基準に逆算して動かなければなりません。

この記事では、ニュージーランドの相続制度、プロベート手続、日本の相続税との関係、不動産と銀行口座の実務、事実婚パートナーや夫婦財産の論点までを整理して解説します。

国際相続の全体像は、国際相続スケジュール|発生から申告まで時系列で解説、準拠法の基本は国際相続があった場合の準拠法もあわせてご覧ください。

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ニュージーランドには現在相続税・遺産税がない

ニュージーランドでは、現在、日本のような相続税や遺産税はありません。
遺産税は1992年に廃止されており、その後は相続そのものに対する全国一律の税はありません。

したがって、ニュージーランド側で相続税申告が必要になるわけではありません。
ただし、相続税がないことと、相続手続が簡単であることは別問題です。

不動産の名義変更、銀行口座の払戻し、プロベート、相続人確認などの手続は必要ですし、日本居住者が相続人になる場合は日本の相続税申告も問題になります。

ニュージーランドに相続税がないことと、日本で申告不要であることは全く別問題です。

ニュージーランドの相続手続はプロベートと管理命令が中心になる

ニュージーランドでは、遺言がある場合はプロベート、遺言がない場合は管理命令が相続実務の中心になります。

日本のように相続人同士で遺産分割協議書を作って終わる、という感覚ではありません。
遺言執行者や遺産管理人が法的な権限を示す書類を取得し、それを前提に銀行や登記の手続を進めます。

ニュージーランド相続の基本手続

遺言あり:プロベート

遺言なし:管理命令

少額遺産:簡易手続が問題になることがある

なお、少額遺産の簡易手続の基準額は、現在40,000ニュージーランドドルに引き上げられています。
不動産を含まず、この金額以下の遺産であれば、高等裁判所の正式な手続を経ずに処理できる場合があります。

プロベート制度の国別比較は、プロベートとは?国別の費用・期間・手続きを徹底比較もご参照ください。

遺言がない場合の法定相続は事実婚パートナーも問題になる

ニュージーランドでは、遺言がない場合、管理命令のもとで法定相続のルールに従って財産を分けます。

配偶者や民事パートナーに加えて、一定の場合には事実婚パートナー(de facto partner)も問題になります。
特に、3年以上の同居関係があると、相続や財産分与で法定の保護を受ける可能性があります。

この点は、日本の「内縁は相続人ではない」という感覚とはかなり異なります。

遺言がない場合の典型例

配偶者またはパートナーと子がいる場合:配偶者またはパートナーが個人動産と155,000ニュージーランドドル(法定金額)を先に取得し、残りの3分の1を配偶者またはパートナー、3分の2を子で分ける

配偶者またはパートナーのみ:原則として全額を取得

子のみ:子が均等に取得

夫婦・パートナーの財産分与制度は相続より先に確認が必要

ニュージーランドでは、夫婦やパートナーの財産分与制度(Property (Relationships) Act 1976)が非常に重要です。
相続の前に、そもそもどこまでが被相続人の遺産なのかを整理しなければなりません。

一定期間以上の婚姻関係や事実婚関係がある場合、婚姻中または共同生活中に形成した財産は、原則として均等分配の対象になります。
そのため、被相続人が亡くなったとき、生存配偶者やパートナーは、遺言の内容より先に財産分与請求(Option A)を行える場合があります。

ニュージーランドでは、相続より前に財産分与で半分を主張できる場面があるため、日本の相続税申告でもどこまでを遺産とみるかが重要です。

夫婦共有や共同所有の考え方は、ジョイントテナンシー(合有不動産権)と相続税・贈与税の注意点も参考になります。

ニュージーランドの不動産は外国人取得規制がある

ニュージーランドでは、2018年以降、海外投資規制が強化され、非居住外国人による住宅用不動産の取得に制限がかかっています。

もっとも、相続で不動産を取得する場合は、通常の購入規制と同じではありません。
相続取得そのものは別扱いになる場面がありますが、その後の保有、居住、売却、再取得まで含めると、海外投資規制との関係を確認しなければなりません。

ニュージーランド不動産では、相続で取得できるかだけでなく、相続後にどう保有・処分できるかまで確認すべきです。

KiwiSaverは相続財産として扱われる

KiwiSaverは、ニュージーランドの代表的な退職貯蓄制度です。
加入者が死亡した場合、残高は原則として遺産の一部として遺言執行者や遺産管理人に支払われます。

つまり、日本の相続税の観点でも、KiwiSaver残高は相続財産として整理する必要があります。
「年金制度だから非課税」と考えない方が安全です。

なお、KiwiSaver残高があるだけで少額遺産の基準額を超えてしまうケースもあり、高等裁判所の手続が必要になることがあります。
銀行預金だけでなく、KiwiSaverなどの退職貯蓄も忘れずに確認すべきです。

家族保護法による遺産分配変更請求にも注意が必要

ニュージーランドでは、遺言があっても、その内容が絶対ではありません。

家族保護法(Family Protection Act 1955)により、配偶者、子、孫などが「十分な扶養がされていない」として裁判所に遺産分配の変更を求めることがあります。
これは日本の遺留分と似た面がありますが、裁判所の裁量が広いのが特徴です。

そのため、遺言書を作成していても、相続人の生活保障や関係性によっては争いが残る可能性があります。
遺留分や家族保護制度の比較は、国際相続の遺留分を徹底解説もご参照ください。

ニュージーランドの銀行口座も相続では手続が必要になる

ニュージーランドの銀行口座は、被相続人の死亡が確認されると凍結されることがあります。

口座の払戻しには、プロベート又は管理命令の取得が前提になるのが通常です。
少額の場合は銀行の裁量で対応できることもありますが、一定額以上では正式な法的書類が必要です。

日本から手続を進める場合は、書類の英訳やアポスティーユ、現地弁護士との連携が問題になります。

海外銀行口座の相続手続全般は、海外銀行口座の相続解約で失敗しない!も参考になります。
翻訳・公証・認証の実務は、相続で必要な翻訳・公証・認証手続きを完全解説もあわせて確認してください。

ニュージーランドに相続税がなくても日本では相続税がかかる

ここが最も誤解されやすい点です。

ニュージーランドに相続税がないからといって、日本居住者がニュージーランド財産を相続したときに、日本でも非課税になるわけではありません。
日本で相続税の納税義務がある人なら、ニュージーランドの不動産、銀行口座、KiwiSaver、投資口座も日本の相続税の対象になり得ます。

ニュージーランド側で相続税がゼロでも、日本側では通常どおり相続税申告が必要になることがあると理解すべきです。

日本の納税義務判定は、国際相続における相続税の納税義務の判定を徹底解説!もご参照ください。

ニュージーランド財産は日本円換算のうえ時価評価する

日本の相続税申告では、ニュージーランド財産を日本円に換算したうえで時価評価しなければなりません。

外貨建て財産の邦貨換算

外貨建て財産は、被相続人の死亡日の対顧客直物電信買相場で日本円に換算します。
債務は対顧客直物電信売相場で換算します。

邦貨換算の詳しい考え方は、【相続税申告】 外貨建て財産、債務の邦貨換算を徹底解説をご参照ください。

ニュージーランド不動産の評価

ニュージーランド不動産は、日本の路線価方式や倍率方式では評価できません。
地方自治体の評価額(Council Valuation)は参考になりますが、それだけで市場価格と一致するとは限りません。必要に応じて現地鑑定士による評価を取得することが重要です。

この点は、海外不動産の相続税評価の方法と注意点をご参照ください。

短期売却では別の課税が問題になることがある

ニュージーランドでは、投資用不動産の短期売却に関する課税ルール(Bright-line test)があります。
相続で取得した不動産を短期間で売却する場合、被相続人の取得時期を引き継ぐかどうかなど、現地側の税務論点が別途生じることがあります。

つまり、相続税がないから売却税務も簡単、とは限りません。
相続後の売却まで見据えて現地税務の確認が必要です。

海外財産は把握される前提で考えるべき

ニュージーランドの銀行口座や金融資産も、CRS(共通報告基準)により日本の税務当局に共有され得ます。

そのため、「ニュージーランドの口座だから日本では分からない」と考えるのは危険です。
海外財産は最初から把握される前提で、正しく申告する方が安全です。

この点は、CRS(共通報告基準)と相続をご参照ください。

国際相続は10か月の申告期限から逆算して動くべき

ニュージーランドの相続では、プロベート、管理命令、翻訳、公証、認証、銀行払戻し、不動産評価などに時間がかかります。

一方で、日本の相続税申告期限は原則10か月です。
そのため、ニュージーランド側の手続が終わるのを待ってから日本の申告準備を始めるのでは遅くなることがあります。

ニュージーランド財産がある相続では、相続開始後すぐに現地手続と日本の申告準備を同時進行で進めるべきです。

スケジュール管理の全体像は、国際相続スケジュール|発生から申告まで時系列で解説をご参照ください。

よくある質問(FAQ)

Q. ニュージーランドに相続税がないなら、ニュージーランド財産は無税で相続できるのか?

A. ニュージーランド側の相続税はありませんが、日本の相続税の納税義務がある場合は、日本で相続税申告が必要です。

Q. 事実婚パートナーにも相続権があるのか?

A. 一定の条件で問題になります。特にニュージーランドでは、3年以上の事実婚関係が相続や財産分与に影響することがあります。

Q. ニュージーランド不動産は外国人でも相続で取得できるのか?

A. 通常の購入規制とは別に相続取得が問題になる場面があります。ただし、その後の保有や処分を含めて確認が必要です。

Q. KiwiSaverは年金だから日本では相続税の対象外か?

A. そうとは限りません。遺産として支払われる以上、日本の相続税の対象財産として整理が必要です。

まとめ

まとめ

ニュージーランド相続では、相続税がないことよりも、プロベートや事実婚パートナー制度、財産分与制度を理解することが重要である。

ニュージーランド不動産には外国人取得規制があるため、相続後の保有や処分まで含めて確認が必要である。

日本居住者が相続人になる場合は、ニュージーランド側で税金がなくても日本で相続税申告が必要になることがある。

KiwiSaverや銀行預金も相続財産として整理し、外貨換算を行ったうえで日本円で評価しなければならない。

ニュージーランド財産がある相続では、現地手続と日本の申告準備を同時進行で進めることが実務上最も重要である。

税理士法人トゥモローズでは、国際相続に強い税理士が、ニュージーランド財産を含む相続税申告、準拠法の整理、海外不動産評価、外国税額控除の要否確認まで一貫してサポートしています。

「ニュージーランド不動産を相続したが何から始めればよいか分からない」
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という場合は、お気軽にご相談ください。

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この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属 
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は350件。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

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