インドネシアの相続手続き|土地制限と税務の注意点

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国際相続

10秒でわかる この記事の要約
①インドネシアには現在相続税がないが不動産の名義変更ではBPHTBなど別の税や費用が問題になる
②インドネシアの相続は民法・イスラム法・慣習法が併存しており被相続人の属性確認が重要になる
③外国人はインドネシアの土地所有権を維持できず相続後1年以内の権利整理が必要になる
④在日インドネシア人の相続では宗教確認と書類の翻訳・認証が実務上の大きな論点になる
⑤日本の相続税の納税義務があればインドネシア財産も日本で申告が必要になる

インドネシアは日本との経済的な結びつきが強く、不動産投資、駐在、技能実習、特定技能などを通じて、日本人・インドネシア人双方の国際相続案件が増えています。

一方で、インドネシア相続は、日本の感覚で考えると誤りやすい分野です。
相続税の有無だけでなく、イスラム法の適用、慣習法の影響、外国人の土地保有制限、不動産名義変更の税負担、宗教裁判所か一般裁判所かの違いなど、多くの論点が同時に出てきます。

結論からいうと、インドネシア相続では、税金よりも「どの法体系で、どの財産を、どう引き継ぐか」を最初に整理することが重要です。
特に、日本人がインドネシア不動産を持つ場合や、在日インドネシア人が日本財産を持つ場合は、日本とインドネシアの両方のルールを同時に確認しないと誤ります。

この記事では、インドネシア特有の相続制度、日本の相続税との関係、不動産の権利制限、在日インドネシア人相続の実務、必要書類、送金までを整理して解説します。

国際相続の全体像は、国際相続スケジュール|発生から申告まで時系列で解説、準拠法の基本は国際相続があった場合の準拠法もあわせてご覧ください。

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目次

インドネシアには現在相続税がない

インドネシアには、現在、日本のような相続税はありません。
そのため、死亡を理由にインドネシア側で一律の相続税が課される前提ではありません。

ただし、相続税がないことと、相続が簡単ということは全く別です。
不動産の名義変更や権利移転では、BPHTB(土地建物権利取得税)や登録費用など、別の税や費用が発生することがあります。

また、相続で取得した不動産をその後売却する場合は、譲渡に伴う課税が問題になることがあります。

インドネシアに相続税がないことと、日本で申告不要であることは全く別問題です。

インドネシアの相続法は一つではない

インドネシア相続の最大の特徴は、相続法が一つではないことです。

大きく分けると、民法、イスラム法、慣習法の3系統が併存しています。
そのため、相続が発生したら、まず被相続人がどの法体系の対象になるのかを確認しなければなりません。

インドネシア相続で最初に確認すべきこと

① 被相続人がイスラム教徒かどうか

② 財産が不動産か銀行預金か会社持分か

③ 財産がインドネシア国内にあるか日本にあるか

④ 遺言があるかないか

⑤ 相続人が日本居住かインドネシア居住か

イスラム教徒にはイスラム相続法が強く影響する

インドネシアは世界最大級のイスラム人口を抱える国であり、多くの案件ではイスラム法の影響が問題になります。

イスラム相続法では、一般に男性相続人が女性相続人より大きい取り分を持つ考え方があり、また遺言で自由に処分できる範囲にも制約があります。
そのため、日本法の感覚で「配偶者に全部残したい」「子どもに均等に分けたい」と考えていても、そのまま実現できるとは限りません。

イスラム相続法で問題になりやすい考え方

男性相続人が女性相続人の2倍の取り分になることがある

遺言で自由に処分できる範囲に制約がある

配偶者の取り分は子の有無で変わる

在日インドネシア人の相続では、まず被相続人がイスラム教徒かどうかを確認しないと、相続人の範囲や分割ルールの前提が崩れます。

非イスラム教徒には民法や慣習法が問題になる

非イスラム教徒については、インドネシア民法や地域ごとの慣習法が問題になります。

特に、地域ごとの慣習法は日本人にとって理解しにくい論点です。
たとえば、地域によっては男系相続、別の地域では母系相続の慣行が残るなど、同じインドネシアでも取扱いが一律ではありません。

つまり、インドネシア相続では「国法だけ見れば足りる」とも限らず、地域慣行まで確認が必要になる場合があります。

外国人はインドネシアの土地所有権を維持できない

インドネシア不動産相続で最も重要なのが、外国人の土地権利の制限です。

インドネシアの土地にはいくつかの権利類型がありますが、最も強い所有権(Hak Milik)は原則としてインドネシア国民しか保有できません。

主な土地権利の類型

所有権(Hak Milik):原則としてインドネシア国民のみ

建設権(Hak Guna Bangunan):法人などで利用されることが多い

使用権(Hak Pakai):外国人が関与できる代表的な権利類型

外国人が相続で所有権(Hak Milik)を取得した場合は、土地基本法の規定により1年以内に権利を処分しなければなりません。
この期間内にインドネシア国民への売却や、使用権(Hak Pakai)等への権利変更を行わなければ、その権利は国に帰属するおそれがあります。

インドネシア不動産の相続では、相続後も保有継続できるのか、売却が必要か、権利の組み替えが必要かまで含めて確認すべきです。

不動産名義変更ではBPHTBが問題になる

インドネシアには相続税はありませんが、不動産の名義変更ではBPHTB(Bea Perolehan Hak atas Tanah dan Bangunan、土地建物権利取得税)が問題になります。

BPHTBは、日本の不動産取得税に似た性質を持ちますが、課税の場面や計算の仕組みは異なります。
そのため、「相続税がないから現地で税金はゼロ」と考えるのは危険です。

さらに、BPHTBが日本の外国税額控除でそのまま使えるかは別問題です。
日本の相続税法上の外国税額控除は「相続税に相当する税」が対象であり、不動産取得に伴う税がこれに該当するかは個別検討が必要になります。

外国税額控除の基本は、相続税の外国税額控除をわかりやすく徹底解説をご参照ください。

インドネシアの相続手続は裁判所や公証人が関与しやすい

インドネシアでは、相続人確認や不動産名義変更の前提として、裁判所や公証人が関与することがあります。

相続人証明書の取得

イスラム教徒の場合は宗教裁判所、非イスラム教徒の場合は一般裁判所や公証人の関与が問題になります。
どこへ行けばよいかは、被相続人の属性と対象財産によって変わります。

不動産名義変更

不動産の名義変更は、土地当局(BPN)での手続が中心になります。
その前提として、死亡証明書、相続人証明書、遺産分割書類などをそろえなければなりません。

つまり、インドネシア相続では「相続人であること」の証明作業自体に時間がかかります。

在日インドネシア人の相続では宗教確認が最初の実務になる

在日インドネシア人が日本で亡くなった場合、日本の国際私法では本国法が出発点になります。
そのため、被相続人がイスラム教徒か非イスラム教徒かを確認しないと、そもそもどの相続法で考えるべきか決まりません。

在留カードや住民票には宗教が記載されないため、家族や本人の生前情報から確認する必要があります。

在日インドネシア人の署名証明や書類認証は時間がかかる

インドネシア人には日本のような印鑑登録証明の仕組みがそのままあるわけではありません。
そのため、日本の相続手続では、在外公館での署名証明や認証が問題になります。

さらに、インドネシアの出生証明書、婚姻証明書、死亡証明書などを日本で使う場合は、翻訳や認証も必要です。

インドネシアはアポスティーユ制度に対応しているため、公文書についてはアポスティーユで整理できる場面があります。
ただし、すべての書類が同じ流れで足りるわけではないため、個別に確認すべきです。

翻訳・公証・認証の実務は、相続で必要な翻訳・公証・認証手続きを完全解説もあわせて確認してください。

インドネシアの銀行口座も相続では凍結・手続が必要になる

被相続人がインドネシアに銀行口座を持っていた場合、死亡の事実が確認されると口座が凍結されることがあります。

口座の払戻しや解約には、相続人証明書、死亡証明書、本人確認書類などの提出が必要です。
日本から手続きを進める場合は、委任状の認証や現地代理人の関与が問題になることもあります。

海外銀行口座の相続手続全般は、海外銀行口座の相続解約で失敗しない!も参考になります。

インドネシア財産があっても日本の相続税がかかる

ここが最も誤解されやすい点です。

インドネシアに相続税がないからといって、日本居住者がインドネシア財産を相続したときに、日本でも非課税になるわけではありません。
日本で相続税の納税義務がある人であれば、インドネシアの不動産、銀行口座、投資、現地権利も日本の相続税の対象になり得ます。

インドネシア側で相続税がなくても、日本側では通常どおり相続税申告が必要になることがあると理解すべきです。

この点は、国際相続における相続税の納税義務の判定を徹底解説!をご参照ください。

インドネシア財産は日本円換算のうえ時価評価する

日本の相続税申告では、インドネシア財産を日本円に換算したうえで時価評価しなければなりません。

外貨建て財産の邦貨換算

外貨建て財産は、被相続人の死亡日の対顧客直物電信買相場で日本円に換算します。
債務は対顧客直物電信売相場で換算します。

邦貨換算の詳しい考え方は、【相続税申告】 外貨建て財産、債務の邦貨換算を徹底解説をご参照ください。

インドネシア不動産の評価

インドネシア不動産は、日本の路線価方式や倍率方式では評価できません。
現地の鑑定評価や売買実例をもとに、日本の相続税の時価として整理する必要があります。

この点は、海外不動産の相続税評価の方法と注意点をご参照ください。

国外財産調書も別途問題になる

インドネシアに不動産や預金を持っている場合、国外財産調書の提出義務が生じることがあります。

年末時点で国外財産が一定額を超える場合は、毎年の提出義務を確認しなければなりません。
相続案件では、被相続人が生前に国外財産調書を出していたかどうかも重要な確認ポイントになります。

国外財産調書の基本は、国外財産調書制度を徹底解説!をご参照ください。

海外財産は把握される前提で考えるべき

インドネシアの金融口座情報は、CRS(共通報告基準)により日本の税務当局に共有される仕組みがあります。

そのため、「インドネシアだから日本では分からない」と考えるのは危険です。
海外財産は最初から把握される前提で、正しく申告する方が安全です。

詳しくは、CRS(共通報告基準)と相続をご参照ください。

インドネシアから日本への送金も事前確認が必要

インドネシア財産を日本へ送金する場合は、送金理由や相続であることを示す書類が必要になることがあります。

相続が終わればすぐ自由に日本へ送金できると考えない方が安全です。
特に、不動産売却代金や高額預金については、銀行側で説明資料を求められることがあります。

国際相続は10か月の申告期限から逆算して動くべき

インドネシアの相続では、裁判所手続、相続人証明、翻訳、公証、認証、不動産評価などに時間がかかります。

一方で、日本の相続税申告期限は原則10か月です。
そのため、インドネシア側の手続が終わるのを待ってから日本の申告準備を始めるのでは遅くなることがあります。

インドネシア財産がある相続では、相続開始後すぐに現地手続と日本の申告準備を同時進行で進めるべきです。

スケジュール管理の全体像は、国際相続スケジュール|発生から申告まで時系列で解説をご参照ください。

よくある質問(FAQ)

Q. インドネシアには相続税がないなら、日本でも税金はかからないのか?

A. かかることがあります。日本の相続税の納税義務があれば、インドネシア財産も日本の相続税の対象になります。

Q. 外国人はインドネシア不動産を相続できるのか?

A. 相続自体は問題になり得ますが、所有権(Hak Milik)をそのまま維持することはできません。土地基本法の規定により1年以内に売却や権利変更が必要です。

Q. インドネシア法の相続分は日本でもそのまま使われるのか?

A. 準拠法がインドネシア法になる場合は、その法体系が問題になります。ただし、日本の公序との関係でそのまま適用できるかは個別検討が必要です。

Q. インドネシア側の手続が終わるまで日本の申告を待てるのか?

A. 自動的には待てません。日本の申告期限を見据えて、日本側の申告準備を並行して進める必要があります。

まとめ

まとめ

インドネシア相続では、相続税の有無よりも、適用法、土地権利、現地手続の違いを理解することが重要である。

イスラム法、民法、慣習法が併存しているため、被相続人の属性確認が不可欠である。

外国人は土地所有権(Hak Milik)を維持できず、相続後1年以内の権利整理が必要になる。

インドネシアに相続税がなくても、日本の納税義務があれば日本の相続税申告が必要になる。

翻訳、公証、認証、不動産評価、送金まで含めて生前から準備しておくことが実務上最も重要である。

税理士法人トゥモローズでは、国際相続に強い税理士が、インドネシア財産を含む相続税申告、準拠法の整理、海外不動産評価、必要書類の確認まで一貫してサポートしています。

「インドネシア財産を日本の相続税でどう扱うか分からない」
「インドネシア不動産を相続した後の権利整理をどう進めるべきか知りたい」
「イスラム法が関係する相続をどう整理すればよいか確認したい」
という場合は、お気軽にご相談ください。

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この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属 
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は350件。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

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