【相続税対策には生前贈与が効果的】生前贈与の活用ガイド!
多くの相続税対策方法がありますが、その中でも「生前贈与」は一番シンプルで効果的な方法です。
そして、生前の準備期間が長ければ長いほど、相続税を大幅に節税することが可能になります。
しかし、生前贈与は正しく理解し、適正な方法で行わなければ「贈与税が高額になった」「家族の争いの引き金になってしまった」など、逆効果になってしまうこともあります。
ここでは「生前贈与が適している人」「生前贈与の方法」「生前贈与の注意点」をご紹介します。
生前贈与の理解を深めるため、ぜひ最後までお付き合いください。
目次
生前贈与の基礎知識
生前贈与とは、その名の通り「生前に自分の財産を他の人に贈与すること」です。
生前贈与により財産を減らすことで、将来の相続税を減らすことができます。
ただし、贈与を行うと「贈与税」が発生します。
贈与税には贈与を受け取る人、1人あたり年間110万円の基礎控除があり、その範囲であれば贈与税が課税されません。
年間110万円を超えると贈与税の負担が発生し、贈与額が増えれば増えるほど贈与税率が増加します。
贈与税率は相続税率よりも高く設定されているため、贈与額によっては相続税の減額効果よりも贈与税の負担が大きくなってしまうこともあります。
年間110万円の基礎控除を上手く使い、長い時間をかけて贈与を行っていくことが効果的な生前贈与のポイントです。
贈与税と相続税の税率差を活用した相続税の節税の詳しい解説は、相続税の税率と早見表をわかりやすく解説!【2022年最新版】をご参照ください。
生前贈与による相続税対策が適している人
生前贈与を考える際に気を付けることは、生前贈与は全ての人に有効な相続税対策ではないということです。状況によっては他の節税対策をおすすめするケースもあります。
次のような状況の人は、生前贈与による相続税対策が効果的です。
早いうちから生前対策を行う人
早いうちから相続に向けて生前対策を行うケースでは、贈与税の年間110万円の基礎控除を長く利用することができるため、生前贈与が効果的です。
その反面、高齢になってから行うケースや緊急性が高いケースでは、生前対策はあまり効果がありません。
特に、亡くなる前3年以内に行われた相続人に対する生前贈与については、生前贈与がなかったものとして、財産に加算して相続税が計算されるため、少なくとも3年以上をかけて生前贈与を行わなければ効果がありません。(孫などの法定相続人以外の人への贈与については、3年以内であっても財産に加算されません。)
子や孫などの贈与先が多い人
贈与税は贈与を受けた人が支払う税金です。そのため、子や孫などの贈与先が多ければ多いほど年間110万円の基礎控除が利用できるため、効果的に財産を移転させることが可能です。
例えば、子3人、孫7人に10年かけて年間110万円を贈与した場合はどうでしょうか。
110万円×10人×10年=1億1,000万円となり、合計で1億1,000万円の財産を移転することができます。
法定相続人である子は3年以内加算がありますので、110万円×3人×3年=990万円はなかったことになりますが、それでも約1億円の財産を移転することできます。
【令和6年の贈与から】亡くなる前7年以内の贈与は相続税の対象へ
相続が発生する前に特定の財産をあげたい人
遺言書がない相続では、相続人全員による遺産分割協議により誰が何を相続するか決定します。
そのため、もし特定の財産を特定の相続人へあげたい場合には、自分の思い通りになるのか不透明です。
遺言書がある場合であっても、相続人全員の同意があれば「遺産分割協議による相続」が可能なため、必ずしも遺言書のとおりになるとは限りません。
「遺言書があっても遺産分割協議は可能|間違えやすいポイントを解説」
生前贈与であれば、特定の財産を特定の相続人へ確実に移転させることができ、それを見届けることができます。
ただし、遺留分については配慮する必要があります。
遺留分の詳しい解説は、遺留分 わかりやすく徹底解説!をご参照ください。
将来的に価値が上昇する財産を持っている人
将来的に価値が上昇すると分かっている財産は、価値が低い時に生前贈与を行うと効果的です。財産の評価は、贈与税なら贈与した時、相続税なら亡くなった時の時価で評価を行います。
そのため「今の価値は低いけど、自分が亡くなる時は価値が数倍になる」と思われる財産は早めに生前贈与するといいでしょう。
中小企業のオーナー
会社の株式の持ち株割合は、会社の意思決定を行う上で重要です。株式は、相続を繰り返すうちに子から孫へ、孫からひ孫へと移転していき、バラバラになってしまうことがあります。
そして、少数の株式を様々な人が保有している分散株式となり、経営面やコスト面で問題になってきます。
また、分散株式を集約するためには時間と資金が必要になるため、株式の分散は会社にとって大きなリスクになります。
自分の意思で行う生前対策は、株式の分散を防止する方法の1つです。他にも事業承継を進める方法はありますが、どの方法でも会社の将来を考え、事前にアクションを起こすことが重要です。
生前贈与の具体的な流れ
生前贈与は、しっかりと手順どおりに行わなければ無効になってしまうこともあります。具体的な流れを見ていきましょう。
①生前贈与の目的を明確にする
まずは「何のために生前贈与を行うのか」を考えてみましょう。
「相続税対策のために行う」「事業承継のために行う」など、生前贈与の目的を明確にします。
②贈与者と受贈者で話し合う
贈与は、贈与者が「あげましょう」受贈者が「もらいましょう」と合意することで成立します。
そのため、贈与者の一存だけではなく贈与者と受贈者がしっかりと話し合い、合意したうえで進めていきましょう。
③贈与契約書を作成する
贈与契約書は、贈与があったことを示す大事な書類です。贈与は「あげましょう」「もらいましょう」の口頭で成立しますが、後々のトラブルに発展しないように必ず贈与契約書を作成しましょう。税務調査での説明資料としても大事になります。
なお、贈与契約書のひな形は下記のページに記載しています。
相続税の税務調査時に、名義預金と認定されない生前贈与の方法【4つの掟】
④財産を引き渡す
贈与契約書通りに財産の引き渡しを行います。現金を贈与する場合であれば、銀行振り込みを行い、証拠が残るようにしましょう。
また、不動産などの登記が必要なものについては、司法書士に相談し、必ず登記を行いましょう。
⑤贈与税の申告を行う
贈与額が年間110万円の基礎控除を超えた場合には、贈与税の申告を行いましょう。
贈与税の申告期限は、所得税の確定申告期限と同じで翌年の3月15日までです。納付期限についても同日の3月15日までになります。
生前贈与の特例
贈与税は、1月1日から12月31日までの贈与に課税を行う「暦年課税」が原則的な方法です。
例外的な方法として、贈与するときには合計2,500万円まで課税されず、相続税申告時に贈与した財産を加算する「相続時精算課税制度」という方法があります。
相続時精算課税を一度選択すると、暦年課税に戻ることはできませんので慎重に検討することが必要です。
詳しくはこちらで紹介しています。
その他、生前贈与には、贈与の目的に合わせて控除や特例が用意されています。利用できる特例がないか検討してみましょう。
生前贈与を行う前にチェックしたい注意点
生前贈与は相続税対策として有効ですが、注意しなければいけない点もあります。生前贈与を検討する際は、次の注意点を頭に入れておくといいでしょう。
名義預金に注意!
名義預金とは「預け入れた人と預金口座の名義人が違う預金」です。
例えば、親が子供名義で積み立てを行っているような預金が該当します。名義預金に該当する場合は、相続税申告で加算しなければなりません。
名義預金については、税務調査で問題になることが多くあります。贈与した金銭が名義預金と認定されないように、しっかりと贈与契約書などの準備をしておきましょう。
名義預金の詳しい解説は、名義預金とは?税務調査で指摘されないために意義と対策を徹底解説をご参照ください。
定期贈与に注意!
定期贈与とは「毎年定期的に一定金額を贈与することが決まっている贈与」のことです。
例えば500万円を5年に分け、毎年1月1日に100万円ずつ贈与するという取り決めが行われた場合などが該当します。
取り決めをした年に500万円の定期金に関する権利を贈与したとして、500万円に対して贈与税が課税されることになります。
「毎回贈与契約書を作成する」「毎年決まった日に贈与しない」「銀行振り込みを行う」など、定期贈与に認定されないように工夫しましょう。
税制改正に注視!
具体的には決まっていませんが、税制改正では相続税と贈与税を一体化する方向で調整が進められています。
そのため、将来の税制改正次第では、生前贈与による節税対策ができなくなる可能性もあります。
これからどのように変わっていくのか注目していく必要があります。当ブログでも、最新情報をお伝えしていきますので、ぜひご覧ください。
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また、適切な申告をしないと、後の税務調査で本来払わなくても良い税金を支払うことにもなります。
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