海外の暗号資産(仮想通貨)と相続税|評価と申告
①暗号資産は日本の相続税の課税対象であり死亡日の時価で評価する
②海外取引所で保有する暗号資産も日本の相続税の課税対象になり得る
③秘密鍵やウォレット情報が不明だと相続人が資産にアクセスできなくなるおそれがある
④暗号資産の国内財産・国外財産の判定は税目ごとに整理が必要である
⑤分散型金融や非代替性トークンの相続税評価は個別事情に応じた慎重な判断が必要になる
暗号資産を保有する人が増える中、海外の取引所やウォレットで管理されている暗号資産の相続が新たな課題となっています。
結論からいうと、暗号資産は日本の相続税の課税対象であり、海外の取引所やウォレットで管理していても相続税の申告が必要になることがあります。
特に、秘密鍵やシードフレーズが分からないまま相続が発生すると、財産としては存在するのに相続人が事実上アクセスできないという深刻な問題が起こります。
この記事では、海外の暗号資産を相続する場合の相続税評価、国内財産・国外財産の判定、国外財産調書との関係、分散型金融や非代替性トークンの評価、税務調査で見られやすいポイントまでを整理して解説します。
国際相続全体の進め方は、国際相続スケジュール|発生から申告まで時系列で解説、生前対策の全体像は国際相続の生前対策|相続人の負担を軽くする7つの方法もあわせてご覧ください。
目次
- 1 暗号資産は相続税の課税対象になる
- 2 暗号資産の相続税評価は死亡日の時価が基本
- 3 外貨建てで表示される場合は日本円換算も必要
- 4 海外取引所で保有する暗号資産も相続税の対象になる
- 5 暗号資産の国内財産・国外財産の判定基準
- 6 最大のリスクは秘密鍵やウォレット情報の喪失
- 7 生前対策をしていないと相続人が対応できない
- 8 国外財産調書では「国外にある暗号資産」の判定が論点になる
- 9 分散型金融と非代替性トークンは個別判断が必要になる
- 10 税務調査では暗号資産の把握が進みつつある
- 11 海外取引所の相続手続は英語対応と書類整備が必要になる
- 12 暗号資産の相続と贈与の境界も問題になる
- 13 準確定申告も相続税より先に動く必要がある
- 14 ハードフォークや派生トークンも見落としやすい
- 15 メタバース資産も課税対象になり得る
- 16 国際相続は10か月の申告期限から逆算して動く必要がある
- 17 よくある質問(FAQ)
- 18 まとめ
- 19 関連記事
暗号資産は相続税の課税対象になる
暗号資産は、日本の相続税では「その他の財産」として扱われ、相続税の課税対象になります。
つまり、ビットコインやイーサリアムのような主要な暗号資産だけでなく、海外取引所に保有しているアルトコイン、ウォレットで自己管理しているトークン、分散型金融に預けている資産なども、相続税の申告対象になり得ます。
「海外の取引所だから日本では申告不要」という理解は誤りです。
日本で相続税の納税義務がある場合は、暗号資産も全体の相続財産に含めて検討する必要があります。
日本の相続税の納税義務判定は、国際相続における相続税の納税義務の判定を徹底解説!も参考になります。
暗号資産の相続税評価は死亡日の時価が基本
暗号資産は、被相続人の死亡日の取引価格を基準に評価するのが基本です。
暗号資産の評価の考え方
① 活発な市場がある場合:死亡日の取引価格を基準に評価する
② 活発な市場がない場合:取得価額や合理的に算定した価額を参考に評価する
③ 外貨建てで把握される場合:死亡日の為替相場で日本円に換算する
ビットコインやイーサリアムのように複数の取引所で活発に取引されている暗号資産は、死亡日の終値や平均価格を参考に評価することが多いです。
一方で、流動性の低いトークンや市場価格が安定しない資産は、単純に画面表示の残高だけで評価できないことがあります。
このような資産は、相続税評価の合理性を説明できる資料を残すことが重要です。
暗号資産の相続税評価の基本や、時価の考え方、評価額の整理方法は、【仮想通貨(暗号資産)に相続税はかかる!】評価方法・評価額まとめも参考になります。
また、価格変動が大きい暗号資産では、相続税とその後の売却課税が重なって想定以上の負担になることがあるため、ビットコインの相続で110%課税?!もあわせて確認しておくと理解が深まります。
外貨建てで表示される場合は日本円換算も必要
海外取引所では、暗号資産残高や法定通貨残高が米ドルなどの外貨で表示されることがあります。
その場合、日本の相続税申告では日本円換算が必要です。
外貨建て財産は、被相続人の死亡日の対顧客直物電信買相場で日本円に換算するのが基本です。
債務は対顧客直物電信売相場で換算します。
為替換算の詳しい考え方は、【相続税申告】 外貨建て財産、債務の邦貨換算を徹底解説をご参照ください。
海外取引所で保有する暗号資産も相続税の対象になる
海外の暗号資産取引所に預けている暗号資産も、日本の相続税の課税対象になり得ます。
海外取引所には、世界的な大手取引所もあれば、地域限定の取引所や分散型取引の入口として使われる取引所もあります。
どの取引所に預けていても、日本で相続税の納税義務がある以上、まずは「あるものとして」把握しなければなりません。
さらに、海外取引所は日本語対応をしていないことが多く、相続手続の案内も英語ベースです。
日本の戸籍謄本や死亡証明書の英訳、公証、認証を求められる場合もあります。
暗号資産の国内財産・国外財産の判定基準
暗号資産の相続では、「相続税の課税対象になるか」と「国内財産か国外財産か」は分けて考える必要があります。
まず、日本の相続税の納税義務がある場合、海外取引所や海外ウォレットで保有している暗号資産であっても、相続税の課税対象になることがあります。
一方で、国外財産調書や財産債務調書の世界では、「その暗号資産が国内にあるのか、国外にあるのか」という別の論点が生じます。
暗号資産の国内財産・国外財産の判定は、直感的に「取引所が海外だから国外財産」とはならない点が重要です。
国外財産調書での基本的な考え方
国税庁の国外財産調書制度に関する資料では、暗号資産は「財産を有する人の住所の所在」により国外にあるかどうかを判定する財産と整理されています。
そのため、日本に住所がある人が海外の暗号資産取引所に保有する暗号資産は、「国外にある財産」にはならず、国外財産調書の記載対象になりません。
つまり、国外財産調書の世界では、海外取引所に預けている暗号資産でも、日本居住者が保有していれば国外財産ではないという整理になります。
この点は非常に誤解されやすいので、国外財産調書の判断では必ず切り分けて考える必要があります。
国外財産調書の基本は、国外財産調書制度を徹底解説!もご参照ください。
自己管理ウォレットの考え方
ハードウェアウォレットやソフトウェアウォレットで自己管理している暗号資産も、国外財産調書の考え方では、保有者の住所を基準に整理するのが基本です。
そのため、日本に住所がある人が自己管理している暗号資産は、通常は国外財産調書の対象にはなりません。
もっとも、実務では、海外のカストディサービスを利用している場合や、複数のサービスが絡む場合など、保管実態の確認が必要になることがあります。
「自己管理だから常に単純」「海外サービスだから必ず国外財産」とは考えない方が安全です。
相続税と国外財産調書は結論が違うことがある
ここで重要なのは、相続税の課税関係と国外財産調書の所在地判定は同じではないという点です。
整理のポイント
① 相続税:日本の納税義務があれば、海外取引所の暗号資産も課税対象になり得る
② 国外財産調書:日本居住者が保有する暗号資産は、海外取引所保有でも国外財産に当たらない整理がある
③ 実務:税目ごとに論点が違うため、一つの結論を他方へそのまま流用しない
この違いを混同すると、相続税では申告すべきなのに国外財産調書の感覚で「国外財産ではないから大丈夫」と誤解したり、逆に国外財産調書の世界で過剰申告したりするおそれがあります。
最大のリスクは秘密鍵やウォレット情報の喪失
暗号資産相続で最も深刻なのは、秘密鍵やウォレット情報が分からないまま相続が発生するケースです。
ハードウェアウォレットやソフトウェアウォレットで自己管理している場合、被相続人しか秘密鍵やシードフレーズを知らないことがあります。
この場合、相続人は財産の存在を認識していても、実際には動かすことができなくなります。
暗号資産は「存在しているのに取り出せない」という事態が起こり得る数少ない相続財産です。
取引所口座と自己管理ウォレットでは難易度が違う
中央集権型の取引所口座であれば、取引所の相続手続によって残高移転や払い出しができることがあります。
一方で、自己管理ウォレットは、秘密鍵を知らなければ原則として第三者が復元できません。
つまり、暗号資産相続では、相続税評価だけでなく、実際に資産へアクセスできるかどうかも同時に確認する必要があります。
生前対策をしていないと相続人が対応できない
暗号資産は、通常の預金や証券よりも生前対策の重要性が高い財産です。
暗号資産の生前対策チェックリスト
① 保有している暗号資産の一覧を作成する
② 取引所・ウォレット・保管場所を整理する
③ 秘密鍵やシードフレーズの保管方法を家族が分かる状態にする
④ 二段階認証の設定状況を整理する
⑤ 遺言書に暗号資産の存在や承継方針を明記する
暗号資産のようにアクセス情報が重要な財産は、通常の財産目録だけでは足りません。
「どこにあるか」「どうアクセスするか」まで整理して初めて実効的な生前対策になります。
生前対策の全体像は、国際相続の生前対策|相続人の負担を軽くする7つの方法をご参照ください。
国外財産調書では「国外にある暗号資産」の判定が論点になる
暗号資産は、国外財産調書の対象になるかどうかの判定でも論点が多い財産です。
一般に、海外取引所に預けている暗号資産は国外財産、国内取引所に預けている暗号資産は国内財産と理解したくなりますが、実務ではそれほど単純ではありません。
特に自己管理ウォレットのように取引所を介さない保有形態では、所在地判定が必ずしも明確ではありません。
つまり、暗号資産は「何を持っているか」だけでなく、「どこに保管しているか」「どの税目で考えるか」によって税務上の論点が変わります。
国外財産調書の基本は、国外財産調書制度を徹底解説!をご参照ください。
分散型金融と非代替性トークンは個別判断が必要になる
分散型金融や非代替性トークンは、通常のビットコインやイーサリアムよりも相続税評価が難しくなりやすい分野です。
分散型金融の資産
流動性供給トークン、貸付プロトコルの預け入れ資産、ステーキング中のトークンなどは、通常の現物残高とは異なる性質を持ちます。
評価時点で何を保有しているか、どのトークンに分解できるかを個別に確認する必要があります。
非代替性トークン
非代替性トークンは、市場価格があればその価格を参考にしますが、流通量が少ない資産では合理的な評価が難しいことがあります。
高額アート作品や限定コレクションは、取得価額だけでは不十分なこともあります。
ステーキング報酬
死亡日までに発生しているステーキング報酬をどう扱うかも論点になります。
明確な統一ルールに当てはめにくいため、実務では保守的な評価を前提に整理することが多いです。
分散型金融や非代替性トークンは、一般的な暗号資産より評価の不確実性が高く、個別事情に応じた説明資料が必要になります。
税務調査では暗号資産の把握が進みつつある
暗号資産は匿名で把握されないと思われがちですが、実際にはそうではありません。
国内の交換業者からは一定の資料提出が行われており、さらにブロックチェーン上の取引履歴そのものは公開されています。
被相続人のウォレットアドレスや取引所口座が特定されれば、過去の保有状況や取引履歴が相当程度追えることがあります。
海外取引所についても、国際的な情報交換や各国当局の連携が進む中で、「海外だから把握されない」と考えるのは危険です。
海外財産の把握の全体像は、CRS(共通報告基準)と相続もあわせて確認してください。
海外取引所の相続手続は英語対応と書類整備が必要になる
海外取引所で保有していた暗号資産を相続する場合は、取引所ごとの手続に従って必要書類を提出することになります。
一般に、死亡証明書、戸籍関係資料、本人確認書類、遺言書や裁判所書類などが問題になります。
日本の書類をそのまま提出できないこともあり、英訳や認証が必要になる場合があります。
翻訳・公証・認証の流れは、相続で必要な翻訳・公証・認証手続きを完全解説も参考になります。
暗号資産の相続と贈与の境界も問題になる
被相続人が生前に暗号資産を家族のウォレットへ送っていた場合、その移転が贈与なのか、相続税の対象となる財産移転なのかの判定が必要になります。
暗号資産は送付日時が明確に残るため、死亡前に移転していれば贈与、死亡後の承継なら相続という整理をまず確認することになります。
さらに、生前贈与加算の対象期間に該当するかどうかも問題になります。
暗号資産はブロックチェーン上に時刻記録が残るため、かえって移転時期の争いが明確になりやすい財産でもあります。
準確定申告も相続税より先に動く必要がある
被相続人が暗号資産の売却益などを申告していなかった場合、相続税とは別に準確定申告が必要になることがあります。
準確定申告の期限は、相続税申告より早く、死亡から4か月です。
そのため、相続税申告だけを見ていると間に合わなくなることがあります。
特に海外取引所では、取引履歴の取得自体に時間がかかることがあります。
相続開始後すぐに取引履歴の確保に着手することが重要です。
ハードフォークや派生トークンも見落としやすい
被相続人が保有していた暗号資産にハードフォークが発生していた場合、新たに生じたトークンも相続財産の対象になることがあります。
相続人が元の暗号資産しか把握しておらず、派生したトークンの存在を認識していないことも多いため、ウォレットや取引履歴を細かく確認する必要があります。
メタバース資産も課税対象になり得る
メタバース上の土地やアイテムが非代替性トークンとして管理されている場合、それらも相続税の課税対象になり得ます。
この分野は価格変動が大きく、流通量も限られるため、評価の難易度はさらに上がります。
取得価額、直近取引価格、類似資産の売買事例などを参考に、合理的な説明ができる形で整理すべきです。
国際相続は10か月の申告期限から逆算して動く必要がある
海外取引所、翻訳、公証、アクセス確認、準確定申告、相続税評価を含む暗号資産相続は、通常の相続より時間がかかります。
| 期限 | 主な手続 |
| 4か月以内 | 被相続人の準確定申告 |
| 10か月以内 | 相続税の申告・納付 |
暗号資産がある相続では、相続開始後すぐに取引所確認、ウォレット確認、アクセス情報確認に着手しないと、日本の申告期限に間に合わなくなるおそれがあります。
スケジュール管理の全体像は、国際相続スケジュール|発生から申告まで時系列で解説もご参照ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 暗号資産の秘密鍵が見つからない場合、相続税は免除されるのか?
A. 免除されるとは限りません。財産の存在や残高が把握できる場合は、アクセス可否とは別に相続税が問題になります。
Q. 海外取引所の暗号資産は日本で申告しなくてよいのか?
A. 申告しなくてよいとはいえません。日本の相続税の納税義務がある場合は、海外取引所の暗号資産も相続財産として検討する必要があります。
Q. 国内財産と国外財産の判定はどう考えればよいのか?
A. 相続税の課税対象判定と、国外財産調書での所在地判定は同じではありません。税目ごとに切り分けて判断する必要があります。
Q. 分散型金融や非代替性トークンはどう評価するのか?
A. 一律の単純な評価方法で済まないことが多く、死亡日時点の残高、価格、取引実績、流動性などを踏まえて個別に判断します。
Q. 海外取引所が破綻している場合はどうなるのか?
A. 回収可能性を踏まえた評価が問題になります。満額評価ではなく、回収見込額や状況説明が重要になることがあります。
まとめ
まとめ
暗号資産は日本の相続税の課税対象であり、海外取引所や自己管理ウォレットにあるものも申告の検討が必要である。
暗号資産相続の最大のリスクは、秘密鍵やシードフレーズが分からず相続人が資産にアクセスできなくなることである。
国内財産・国外財産の判定は、相続税と国外財産調書で整理を分けて考える必要がある。
分散型金融、非代替性トークン、ステーキング報酬は個別判断の要素が強い。
暗号資産の相続では、評価、アクセス、準確定申告、相続税申告を並行して進める必要がある。
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