名義預金の最新裁決事例(令和7年~令和8年)まとめ 相続専門税理士の所感付き!

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名義財産・生前贈与

みなさん、こんにちは
相続専門の税理士法人トゥモローズの角田です。

名義預金の評価や計算方法は法律や通達に記載されていません。
過去の裁判例や裁決事例を参考に計算するしかないのです。

今回は、令和7年1月から令和8年3月までの間における国税不服審判所の裁決事例のうち名義預金について納税者と国税当局の間で争いになったものをまとめたいと思います。
出典は国税不服審判所の「裁決要旨検索システム」(令和8年3月31日までの裁決を収録)です。

名義預金についての詳しい説明は、名義預金とは?相続税の対象になる判断基準と税務調査対策を徹底解説を参照してください。
平成25年~平成27年の裁決事例のまとめは、名義預金の最新裁決事例(平成25年~平成27年)まとめ 相続専門税理士の所感付きを参照してください。
平成28年~令和2年の裁決事例のまとめは、名義預金の最新裁決事例(平成28年~令和2年)まとめ 相続専門税理士の所感付き!を参照してください。
令和3年~令和4年の裁決事例のまとめは、名義預金の最新裁決事例(令和3年~令和4年)まとめ 相続専門税理士の所感付き!を参照してください。
令和5年~令和6年の裁決事例のまとめは、名義預金の最新裁決事例(令和5年~令和6年)まとめ 相続専門税理士の所感付き!を参照してください。

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令和7年1月17日 高松国税不服審判所 非公開裁決事例

誰の名義?

相続人ら名義(被相続人は養母)

裁決事例要旨

請求人らは、請求人らと養母(本件被相続人)が相続人となる亡養父に係る相続(一次相続)において、本件被相続人が全ての財産を相続する旨の遺産分割協議書が成立していないことを前提に、①一次相続の相続財産である未登記の建物(本件建物)を本件被相続人が相続することを承認していないこと、及び②本件被相続人に係る相続(本件相続)の時点における請求人らの名義の預貯金(本件預貯金)は、請求人らが一次相続において取得したものであることなどを理由に、本件建物及び本件預貯金は、本件相続により請求人らが取得した財産ではない旨主張する。しかしながら、①一次相続に係る遺産分割協議書には、一次相続に係る相続財産は全て本件被相続人が相続する旨記載され、本件被相続人及び請求人らの実印が押印されており、真正に成立していることから、本件建物は一次相続により本件被相続人に帰属する財産となったこと、及び②本件預貯金については、本件被相続人が原資を出捐したものであり、請求人らに名義変更された後も本件被相続人が管理し、請求人らに贈与された事実もないことからすれば、本件建物及び本件預貯金は、本件相続の時点で本件被相続人に帰属していた財産であり、請求人らが本件相続により取得した財産である。(令7.1.17 高裁(諸)令6-7)

結論

納税者の負け

相続専門税理士角田の所感

二次相続の場面で「一次相続のときに自分たちがもらったものだ」と主張した事案である。

しかし、一次相続の遺産分割協議書には「全財産を養母が相続する」と書かれ、請求人ら自身の実印が押されていた。
その後に預貯金の名義を請求人らに変えたとしても、名義変更は贈与ではない。
原資を出したのが養母で、名義変更後も養母が管理していたのであれば、贈与の事実がない限り養母の財産のままである。

この事案の教訓は2つある。
1つは、一次相続の遺産分割協議書は、二次相続の税務調査でもそのまま証拠として使われるということだ。
一次相続で「全部を配偶者に」と書いた以上、その後に子名義へ移した財産は、贈与の形を整えていなければ二次相続の財産になる。

もう1つは、名義変更のときに贈与の事実を示せる記録(贈与契約書や贈与税の申告)を残し、通帳と印鑑を名義人が持っていれば、結論は変わり得たということだ。
一次相続と二次相続をまたぐ財産の動きは、二次相続まで見据えて記録を残しておく必要がある。
贈与の形の整え方は贈与契約書の書き方にまとめている。

令和7年5月19日 東京国税不服審判所 非公開裁決事例

誰の名義?

相続人ら名義の口座(この口座から生命保険の保険料を支払っていた)

裁決事例要旨

請求人らは、請求人らの父(本件被相続人)の相続に係る相続税について、本件被相続人の死亡により取得した生命保険契約に係る各保険金(本件各保険金)を相続財産として申告したものの、本件各保険金に係る保険料(本件各保険料)は、請求人ら名義の口座(本件請求人ら口座)の各預金を本件被相続人の預金口座に移し替えて支払ったものであり、本件各保険料の負担者は請求人らであるから、本件各保険金は相続税の対象となる財産に該当せず、更正の請求ができる場合に該当する旨主張する。しかしながら、本件請求人ら口座の管理や運用は本件被相続人が行っていたものと認められ、また、本件請求人ら口座の各預金の原資の出捐者が請求人らであると認めるに足りる証拠はないから、本件各保険料の負担者が請求人らであるということはできず、更正の請求ができる場合に該当しない。(令7.5.19 東裁(諸)令6-207)

結論

納税者の負け

相続専門税理士角田の所感

名義預金の論点が、生命保険金の課税にまで波及した事案である。

死亡保険金が相続税の対象になるかどうかは、保険料を誰が負担したかで決まる。
被相続人が保険料を負担していた部分は、相続税法3条1項1号により相続財産とみなされる。

請求人らは、保険料は自分たち名義の口座から被相続人の口座に移して払ったのだから、負担者は自分たちだと主張した。
しかし審判所は、その「請求人ら名義の口座」自体の管理・運用を被相続人が行っていて、原資が請求人らだという証拠もないと認定した。
口座が名義預金なら、そこから払った保険料の負担者も被相続人であり、保険金は相続財産になる。

この事案は、一度は保険金を相続財産として申告したうえで、更正の請求で争っている。
更正の請求は「申告が法律に従っていなかった」ことを納税者側が立証しなければならず、名義預金の反証ができなければ認められない。

子の口座から保険料を払う形で契約するなら、その口座の原資と管理が子自身のものであることを示せる状態にしておかなければ、名義預金と保険金の二重で課税されることになる。
生命保険金の課税の仕組みは生命保険金にかかる相続税、受取人と契約者の関係は保険金受取人の関係を参照してほしい。

令和7年8月20日 関東信越国税不服審判所 非公開裁決事例

誰の名義?

家族名義

裁決事例要旨

請求人らは、請求人らの一部の者の名義の預貯金等(本件家族名義預貯金等)には、①被相続人の妻(請求人妻)が原資を出えんしたもの、②請求人妻が被相続人から贈与を受けたものが含まれているから、本件家族名義預貯金等の一部は被相続人の相続財産ではない旨主張する。しかしながら、請求人妻は、調査において、本件家族名義預貯金等の原資が被相続人の出えんによるものである旨申述しているところ、その申述内容及びその信用性並びに被相続人及び請求人妻の収入の状況等を考慮すると、被相続人は、本件家族名義預貯金等の原資の全額を出えんしたと認められる。また、各証拠資料並びに当審判所の調査及び審理の結果によっても、請求人妻が被相続人から贈与を受けたことを認めるに足りる証拠はないから、被相続人の請求人妻に対する贈与の事実を認めることはできない。したがって、本件家族名義預貯金等の原資を出えんしたのは被相続人であり、請求人妻が贈与を受けていたとも認められないから、本件家族名義預貯金等は被相続人の相続財産であると認めるのが相当である。(令7.8.20 関裁(諸)令7-2)

結論

納税者の負け

相続専門税理士角田の所感

いわゆる「へそくり」型の典型である。
夫婦の収入に差があり、妻名義や子名義の預貯金の原資が夫の収入だった、というケースは税務調査で最も多く指摘される。

この事案で決定的だったのは、妻自身が税務調査のときに「原資は夫が出したものです」と申述していたことだ。
審査請求の段階で「妻が出した部分もある」「夫から贈与を受けた」と主張を変えても、調査での申述の方が信用されてしまう。
税務調査での一言は、そのまま裁決の証拠になる。

さらに、夫婦間であっても贈与は契約である。
「生活費の残りを妻がためていた」「夫が自由に使っていいと言った」という事情だけでは、贈与の事実は認められない。
贈与は口頭でも成立するので契約書が必須というわけではないが、契約書も振込記録も贈与税申告もない状態では、後から贈与があったことを立証するのは難しい。
夫から妻への贈与を主張するなら、贈与の事実を示せる記録(贈与契約書や振込記録、110万円を超える年の贈与税申告)と、妻自身による管理が要る。

専業主婦の家庭で妻名義の預金をどう計算するかは専業主婦の場合の計算方法、共働きの場合は共働き夫婦の場合の計算方法にまとめている。
名義預金にしないための贈与の作法は名義預金と認定されない生前贈与の方法を参照してほしい。

令和7年12月9日 仙台国税不服審判所 非公開裁決事例

誰の名義?

長男・二男名義

裁決事例要旨

請求人らは、被相続人の長男及び二男(請求人長男ら)名義の各預金(本件各預金)に係る預入額について、請求人長男らに対する役員給与等から天引きをして預入れをしていたため、本件各預金の原資の出捐者は請求人長男らであること、また、請求人長男らは被相続人を信頼して本件各預金の管理を任せていたことから、本件各預金は請求人長男らに帰属し相続財産には該当しない旨主張する。しかしながら、請求人長男らに対する役員給与等から本件各預金の預入額に係る天引きは行われておらず、被相続人に帰属する預金口座から預入れが行われていたことから、本件各預金の原資の出捐者は被相続人であると認められる。また、本件各預金の口座開設や預入額の変更等の手続は被相続人又は被相続人の指示を受けた被相続人の配偶者によって行われ、本件各預金に係る届出印は被相続人が管理していたことなどから、本件各預金の管理及び運用は被相続人が行っていたと認められる。したがって、本件各預金は被相続人に帰属する相続財産であると認められる。(令7.12.9 仙裁(諸)令7-8)

結論

納税者の負け

相続専門税理士角田の所感

同族会社のオーナー家で起きやすい事案である。

納税者の主張は「息子たちの役員給与から天引きして積み立てた預金だから、原資は息子たちだ」というものだった。
筋としては通る主張である。
給与から天引きした積立であれば、原資は給与をもらった本人であり、親が通帳を預かっていただけなら「管理を任せていた」で説明がつく。

しかし審判所が事実を調べると、給与からの天引きは行われておらず、預入れは被相続人の口座から行われていた。
ストーリーと帳簿が食い違っていたのである。
さらに、口座開設や預入額の変更の手続は被相続人か、被相続人の指示を受けた配偶者が行い、届出印も被相続人が持っていた。
原資・管理の両方が被相続人であり、結論は動かない。

「子の給与からの積立」にしたいなら、子の給与口座から子自身が振り替え、届出印は子が持つ。
それだけで、この事案の結論は逆になっていた可能性が高い。
名義預金かどうかを自分で確認したい方は、名義預金の判定フローチャートで原資と管理の2点を当てはめてみてほしい。



名義預金の最新裁決事例(令和7年~令和8年)まとめ 相続専門税理士の所感付き!の写真

この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属 
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は300件以上。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

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また、適切な申告をしないと、後の税務調査で本来払わなくても良い税金を支払うことにもなります。

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