小規模宅地等の特例をわかりやすく完全解説! 土地の金額が最大80%減額!
相続税の計算で最重要と言ってもいいくらいの特例の存在をご存知ですか?
その特例とは、土地の評価に関する特例である小規模宅地等の特例です。
この特例を適用できるか否かで相続税が数百万円、数千万円単位で変わってきます。
なぜこんなにもインパクトがあるかというと、小規模宅地等の特例の適用ができれば、土地の評価額を最大80%減額できるからなのです。
80%減額もできるような効果が大きい特例は要件も非常に厳しくなっています。
この厳しい要件を満たすかどうかで相続税の負担に雲泥の差が出てしまいます。
今回はこの小規模宅地等の特例について、税金や相続の知識が全くない人でも理解できるようにわかりやすく解説します。
ただし、どうしても説明が難しくなってしまう箇所もあるため、相続手続きを進める中で少しでも「難しいな」と感じた方は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
また、相続税申告における土地評価の基本について詳しく知りたい人は、相続税の土地評価 申告で使えるすべての方法をわかりやすく徹底解説をご参照ください。
動画で小規模宅地等の特例を詳しく知りたい人は下記YouTubeから、テキストで確認したい人はこのままスクロールして一番最後までお読みください!
目次
小規模宅地等の特例とは?
小規模宅地等の特例は、亡くなった人が所有していた土地について最大で80%減額できる特例です。
1億円の土地なら2,000万円の評価で済むのです。ものすごい大きな特例ですよね。
仮に相続税の税率が30%だった場合には、2,400万円(小規模宅地等の特例適用額8,000万円×税率30%)もの相続税が減額できるのです。
小規模宅地等の特例がもしなかったら亡くなった人が住んでいた土地など遺族にとって重要な土地を相続税を支払うために売ってしまわなければならない事態になるかもしれません。
このような酷なことにならないためにも最大80%減額という非常に大きな特例が用意されているのです。
次の項目で小規模宅地等の特例の種類や要件についてより詳しく解説していきます。
小規模宅地等の特例の対象となる土地(宅地)は3種類に分けられる
小規模宅地等の特例には、
2. 事業をしていた土地/特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等 【400㎡まで80%減額】
3. 貸していた土地/貸付事業用宅地等 【200㎡まで50%減額】
と、大きく分けて3種類があります。種類ごとに解説していきます。
1. 住んでいた土地/特定居住用宅地等
特定居住用宅地等とは、被相続人(亡くなった人)が住んでいた宅地で、配偶者または一定の条件を満たす親族が取得した部分のことをいいます。
特定居住用宅地等の概要を理解するには、順序立てて考えることが一番の近道です。全部で3ステップあります。
①ステップ1:亡くなったときの利用状況要件
大前提として、特定居住用宅地等の対象となるのは、亡くなった人又は亡くなった人と同じ生計の親族が住んでいた土地でなければなりません。
このステップ1を満たさない限りは、ステップ2には進めません。
■ア 亡くなった人が住んでいた土地
まずは、ステップ1の「亡くなった人が住んでいた土地」から解説しましょう。
「亡くなった人が住んでいたかどうか」について、迷うことなどないと感じるかもしれませんが、意外と判断に迷うケースがあるのです。
まず第一に、亡くなった人が老人ホームに入居していたケースがあります。私の肌感覚では、相続税がかかる人が亡くなった場合、生前に老人ホームに入居していたケースは半分くらいあるのではないかと思います。
亡くなった人が老人ホームに入居していた場合でも、亡くなった人が要介護認定を受けていた場合等の要件を満たす場合には、もともと住んでいた土地を亡くなった人が住んでいたものとして考えることができます。
※詳しくは、「【小規模宅地の特例】老人ホーム論点をパターン別に徹底解説」をご覧ください。
また、亡くなった人が住んでいた土地の上の建物は、必ずしも亡くなった人が所有している必要はありません。
建物の所有者が親族であれば、特定居住用宅地等に該当するのです。
詳しくは、「【小規模宅地等の特例】被相続人の建物でなくても小規模宅地の特例は適用可能か」をご覧ください。
■イ 生計一親族が住んでいた土地
生計一親族とは、簡単に言うと、亡くなった人と同じ財布で生活していた親族をいいます。
基本的には亡くなった人と同居していた親族が生計一親族に該当することが多いですが、同居していたということは、上記アの亡くなった人が住んでいた土地と同じになります。
この規定で考えるべきは、「亡くなった人と別居していた親族が住んでいた土地について」です。
考えられるパターンとしては、親は東京に住んでいて、その息子が大阪の大学に行くために親所有のマンション1室に住んでいて、親からの仕送りで生活していた場合です。このとき、親が亡くなった場合は、息子が住んでいた大阪のマンションは特定居住用宅地等に該当するのです。
生計一親族について、もう少し詳しい内容を知りたい場合には、「生計を一にする親族とは? 小規模宅地の特例を最大限活用」を参照してください。
②ステップ2:取得者要件
ステップ1により、亡くなった人又はその生計一親族が住んでいた土地に該当した場合には、次のステップに進めます。
こちらも「亡くなった人が住んでいた土地」と「生計一親族が住んでいた土地」に分けて解説します。
■ア 亡くなった人が住んでいた土地
亡くなった人が住んでいた土地について、ステップ2で判断すべきポイントは、「その土地の取得者が誰か」ということです。
要件を満たす取得者は、「配偶者、同居親族、家なき子の3者のみ」です。
・配偶者:亡くなった人の夫又は妻が該当します。内縁の妻等の婚姻関係のない人は該当しません。
・同居親族:亡くなった人と同じ家に住んでいた親族が該当します。
同居かどうかの判断が難しいケースも多々あります。実務上、よく迷うケースは「【小規模宅地の特例】これって同居親族?パターン別に徹底解説」にまとめていますのでご覧ください。
また、この同居親族を考えるにあたって、よく出てくる論点は二世帯住宅です。こちらは「【小規模宅地の特例】同居親族と二世帯住宅をパターン別に徹底解説(建物構造・登記編)」でわかりやすく解説しています。
・家なき子:簡単に言えば、「第三者所有の建物に賃貸暮らししている人」です。
この家なき子は要件が複雑怪奇です。なるべくわかりやすく解説しますので、お付き合いください。
下記のすべての要件を満たした場合に、家なき子となれます。
①亡くなった人に配偶者がいないこと
②亡くなった人と同居している法定相続人※がいないこと
③土地を相続する人が亡くなる前3年間に自己、自己の配偶者、自己の3親等内親族、自己と特別の関係にある法人の所有家屋に住んでいないこと
④亡くなったときに土地を相続する人が住んでいた家屋を過去に所有していないこと
※法定相続人については、「【相続税申告の基礎知識】基礎控除と法定相続人(法定相続分)について詳しく解説します」を参照してください。
なるべくわかりやすく解説したつもりですが、家なき子をもう少し詳しく知りたい人は、下記2つのコラムをご参照ください。
小規模宅地の特例 家なき子(特定居住用宅地等)を徹底解説
【小規模宅地の特例】平成30年税制改正・家なき子特例
■イ 生計一親族が住んでいた土地
生計一親族が住んでいた土地で、特定居住用宅地等の要件を満たすその土地の取得者は、その「生計一親族」と「亡くなった人の配偶者」です。生計一親族は当然ですが、間違いやすいのは配偶者です。
そこに住んでもいない亡くなった人の配偶者が取得したとしても、特定居住用宅地等に該当するのです。意外に盲点ですので気をつけましょう。
③ステップ3:申告期限までの継続要件
このステップ(申告期限までの継続要件)はそこまで難しくありません。上の図を見てもらえれば一目瞭然です。
すなわち、取得した土地を相続税の申告期限まで所有し続けたり、居住し続けたりする必要があるということです。配偶者には要件がないのがポイントです。
注意点としては、新型コロナウイルスや自然災害等の影響で申告期限が延長された場合には、その延長された期限まで継続要件も延長されますので注意が必要です。
所有(保有)継続要件の詳細は、「【小規模宅地の特例】売却したら適用できない?保有継続要件の解説」にまとめています。
また、建物を建築中の場合には、建築中(建替え中)の場合の小規模宅地等の特例を徹底解説をご参照ください。
2. 事業をしていた土地/特定事業用宅地等・特定同族会社事業用宅地等
実務上、そこまで頻出しませんので、簡単に解説します。
特定事業用宅地等は、亡くなった人やその生計一親族が事業をしていた土地について、一定の要件を満たした場合に小規模宅地等の特例の適用ができる土地をいいます。
事業とは、所得税における事業所得となるような事業です。八百屋や料理屋など、俗にいう「自分の店」を持っている場合をイメージするとわかりやすいかと思います。
注意点としては、「亡くなった人のやっていた事業と同じ事業を申告期限まで継続する必要がある点」です。詳細は、「【小規模宅地の特例】事業用宅地等を転業した場合」を参照してください。
また、特定事業用宅地等の兄弟分として、「特定同族会社事業用宅地等」という区分もあります。これは、「亡くなった人の同族会社の事業の敷地にも小規模宅地等の特例が適用できる」というものです。
こちらは「【小規模宅地の特例】特定同族会社事業用宅地等を徹底解説」で詳しく解説しています。
最後に、特定事業用宅地等は平成31年に大きな改正がありました。「【小規模宅地の特例】特定事業用宅地等に係る小規模宅地等の特例の見直し【平成31年度改正】」でまとめています。
3. 貸していた土地/貸付事業用宅地等
亡くなった人やその生計一親族が貸付をしていた土地についても、小規模宅地等の特例が可能です。貸付事業用宅地等といいます。
貸付事業用宅地等の詳しい解説は、【小規模宅地の特例】貸付事業用宅地等とは?50%減額可能!をご参照ください。
また、貸付事業用宅地等で論点となるのが「相当の対価」で貸付をしているかという点です。
例えば、親族に低額で貸していた土地については、小規模宅地等の特例が適用できない可能性もあります(参照:小規模宅地の特例における「相当の対価」について徹底的に解説します)。
次に、賃貸アパートについて空室がある場合も、税務署と争いになることが多いです。
亡くなったときに空室であってもちゃんと募集をして、ある程度短い期間で次の入居者が決まったのなら貸付事業用宅地等に該当するものとして考えて問題ないでしょう(参照:空室がある場合の貸家建付地評価と小規模宅地の特例)。
貸付事業用宅地等は、平成30年度に大きな改正がありました。
この制度を適用した過度の租税回避を防止する目的で改正されました。亡くなる前3年以内に貸し付けた土地については、貸付事業用宅地等に該当しなくなったのです。
詳しくは、下記コラムを参照してください。
どこまでの面積を適用できるのか、またどこまでの割合が減額できるのか(限度面積積及び減額割合)
小規模宅地等の特例には、適用できる限度となる面積や減額割合があります。
1. 住むための土地(特定居住用宅地等)の限度面積と減額割合
減額割合80%
2. 事業していた土地(特定事業用宅地等、特定同族会社事業用宅地等)の限度面積と減額割合
減額割合80%
3. 貸していた土地(貸付事業用宅地等)の限度面積と減額割合は以下のとおりです。
減額割合50%
【具体例1】
- 相続税評価額:1億円
- 地積:200㎡
- 小規模宅地等の特例適用額:8,000万円(1億円×80%)
【具体例2】
- 相続税評価額:4,000万円
- 地積:400㎡
- 小規模宅地等の特例適用額:2,640万円(4,000万円×330㎡/400㎡×80%)
なお、特定事業用宅地等と一緒に適用する場合には、完全併用が可能で、最大で730㎡まで小規模宅地等の特例の適用が可能です。
貸付事業用宅地等と一緒に適用する場合には、下記算式により計算し、200㎡までが限度となります。
「①特定居住用宅地×200\330+②特定事業用宅地×200/400+③貸付事業用宅地≦200㎡」
詳しくは、「【小規模宅地の特例の計算方法】限度面積と有利選択について徹底解説」をご覧ください。
小規模宅地の特例の適用を受けるために必要な書類
小規模宅地等の特例の適用を受けるためには、相続税申告書に一定の書類を添付する必要があります。
必ず添付が必要なのは、下記3つとなります。
- 「被相続人の全ての相続人を明らかにする戸籍の謄本」又は「法定相続情報一覧図(図形式のものに限ります)」
- 遺言書の写し又は遺産分割協議書の写し
- 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議書に押印したもの)
そのほか、家なき子のときは、居住家屋の登記簿謄本や被相続人が老人ホームに入居していた場合には、介護保険証や老人ホームの入居契約書などケースによって添付資料が異なってきます。
詳しくは「小規模宅地の特例の適用を受けるのに必要な添付書類を徹底解説」をご覧ください。
■関連記事:
>>不動産(土地・建物)にかかる相続税と手続・評価方法のわかりやすい解説
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相続税の小規模宅地等の特例について、その概要を解説しました。
小規模宅地等の特例は節税効果が大きく、積極的に活用したい制度です。
実務上でもよく質問を受けるので、それだけ知名度と関心が大きいのでしょう。
小規模宅地等の特例は、間違えが許されません。財産の評価を間違えた場合には、更正の請求等で間違えを是正することが可能です。小規模宅地等の特例は、原則として当初申告で納税者が採用したものを変更することができないのです。
「もっと有利に小規模宅地等の特例を使えたのに!」と申告後に思っても後から修正ができないという非常に怖い特例でもあるのです。
したがって、小規模宅地等の特例を適用する場合には専門の税理士に依頼してしまったほうが良いでしょう。
また、近年の改正により、税法の裏をかくような手法はできなくなっていますので、計画的に相続税対策を進めることが重要です。
申告時の手続きも少し複雑なので、悩んだらすぐに税理士に相談することをおすすめします。
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相続税の手続きは慣れない作業が多く、日々の仕事や家事をこなしながら進めるのはとても大変な手続きです。
また、適切な申告をしないと、後の税務調査で本来払わなくても良い税金を支払うことにもなります。
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