不動産(土地・建物)がある場合の評価方法・遺産分割・相続登記

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土地評価

こんにちは、相続税専門の税理士法人トゥモローズの角田です。

相続手続きにおいて、亡くなった人の財産に不動産がある場合には、主に以下の3つについて考えなくてはいけません。

  • 不動産の評価(遺産分割を決める上で評価額が重要となり、相続税がかかる場合にも評価は重要な工程)
  • 遺産分割(その不動産を誰が相続するのかを決めること)
  • 相続登記(不動産を相続人へ名義変更すること)

今回は、遺産分割や相続税申告における不動産(土地・建物)の評価方法、相続登記等の不動産の相続手続きについてわかりやすく説明します。

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1. 不動産(土地・建物)の評価

遺産分割を決めるにしろ、相続税申告をするにしろ、まず初めにしなければならないのは不動産の評価額を算定することです。 不動産は「土地」と「建物」に分かれますので順番に解説していきます。

(1)土地の評価

遺産分割における土地の評価と相続税申告における土地の評価は下記の通り異なります。

遺産分割:相続人の任意
相続税申告:相続税評価額

①遺産分割における土地の評価

相続人が合意した評価額であれば問題ありません。

土地は一物四価とも言われます。すなわち、一つの土地について4つもの価格が存在するということです。

相続人が合意すれば4つの価格のうちどの価格を用いても問題ありません。

具体的には下記の価格です。

  1. 公示地価
  2. 実勢価格
  3. 相続税路線価
  4. 固定資産税評価額

一つ一つ簡単に解説します。

公示地価

土地を売買する上で参考にする指標で、毎年3月下旬頃に公表されます。
>>標準地・基準地検索システム~国土交通省地価公示・都道府県地価調査~

実勢価格

実際に土地を売買する上での価格を指します。不動産業者が確認するレインズ等で確認できます。

相続税路線価

相続税の土地評価で使用する路線価のことです。公示価格の8割程度といわれています。
詳しい評価方法は「②相続税申告における土地の評価」で後述します。

固定資産税評価額

固定資産税の土地評価で使用する路線価のことです。公示価格の7割程度といわれています。 全国地価マップという一般財団法人 資産評価システム研究センターが運営しているサイトで固定資産税路線価を調べることができます。
>>全国地価マップ

 

上記4つ以外の価格で遺産分割をするケースもあります。
 
なお、争い案件になってしまった場合には上記のうち実勢価格を土地の評価として遺産分割するケースが多いでしょう。
 

遺産分割の土地の評価は相続人の任意で決められると説明してきましたが、その評価が遺産分割にどのような影響を及ぼすか説明だけだとわかりずらいので具体的な金額を使って確認してみましょう。

【具体例】
被相続人 母
相続人 長男、次男
遺産 
 土地(実勢価格1億円、相続税評価額5,000万円)
 預金 1億円
遺産分割方針   
 土地はすべて長男で遺産全体で法定相続分である各1/2になるように

【ケース1 土地を実勢価格で評価した場合】
取得財産  
 長男 土地1億円
 次男 預金1億円

【ケース2 土地を相続税評価額で評価した場合】
取得財産
 長男 土地5,000万円と預金2,500万円の合計7,500万円
 次男 預金7,500万円

いかがでしょうか? 土地の評価を実勢価格にしたら長男は預金を一切もらえませんが、相続税評価額としたら長男は2,500万円も預金をもらえるのです。

遺産分割における土地の評価が非常に重要だとお分かりいただけたと思います。

②相続税申告における土地の評価

「不動産を相続したら必ず相続税申告が必要になる」というわけではありません。

不動産を含めた遺産の合計が、基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人の数)の額を超えたときにのみ相続税の申告が必要となります。

相続税の申告が必要あるかどうかを判定する上でも、不動産の相続税評価額を計算する必要があります。

そこで、以下では相続税申告のときに使える相続税評価額の算定方法について解説します。まずは土地からです。

A. 路線価方式

主に市街地における土地の評価をする場合に採用する評価方法です。国税庁が毎年1月1日時点の路線価を設定し、7月上旬に公表しています(財産評価基準書|国税庁)。

なお、路線価とは、市街地のほぼすべての道路に設定された1㎡当たりの価格です。

路線価図の見方はここでは解説を省きますが、その不動産の前面道路の路線価にその不動産の面積を乗じて評価額を算出します。

形が悪い土地や大きな土地などには減額補正をして、評価額を抑えることが可能です。この減額補正をどれだけ見つけられるかが税理士の腕の見せどころです。主な補正は以下を参照してください。
>>土地及び土地の上に存する権利の評価についての調整率表(平成31 年1月分以降用)

逆に複数路線に面している土地は加算補正が必要です(側方路線影響加算の基本と加算の有無を徹底解説)。

また、貸している土地や貸家の敷地などは一定の減額が可能です。

■貸している土地

底地貸宅地とも言いますが、その土地の上に他人の建物が建っている土地です。

土地を借りている人のその土地に対する権利を借地権といいますが、その借地権の割合を評価額から減額することができます。

貸宅地の評価額は、「路線価評価額×(1-借地権割合※)」で計算します。
※借地権割合は路線価図に記載されており、路線価の数字の右側のローマ字を見て判断します。

路線価図の例

借地権割合

■貸家の敷地

賃貸アパートや戸建て賃貸の敷地についても以下の減額が可能です。貸家建付地(かしやたてつけち)といいます。

貸家建付地の評価額は、「路線価評価額×(1-借地権割合×借家権割合※1×賃貸割合※2)」で計算します。

※1 借家権割合は一律30%です。
※2 賃貸割合は、賃貸アパートの敷地のときに出てくる割合ですが、被相続人が亡くなったときにおける稼働率のことです。すなわち、「賃貸中の部屋の床面積/全部屋の床面積」で計算します。

B. 倍率方式

郊外の土地などは固定資産税評価額に一定の倍率を乗じて計算する方法、いわゆる倍率方式による評価額が採用されます。

路線価方式と比べ、固定資産税評価額に決められた倍率を掛ければ計算が終わるため、簡便な評価方法となります。

例えば、東京都の倍率表は以下のリンクから確認できます。
http://www.rosenka.nta.go.jp/main_r01/tokyo/tokyo/ratios/city_frm.htm

なお、倍率方式による評価でも、地積規模の大きな宅地やセットバック等の補正は適用できますので、忘れないように気をつけましょう。

C. 不動産鑑定士による鑑定評価

不動産を評価するにあたっては、路線価方式と倍率方式がレギュラーな評価方法ですが、この2つの評価方法を使うことが不合理となる場合には、不動産鑑定士に鑑定評価をお願いするケースがあります。

ただ、この方法は相当レアで100件に1件もないくらいです。

なぜかというと、この評価方法で税務署に申告した場合には後日税務調査で否認されてしまう可能性があるからです。相当特殊な土地でないと採用できないと考えていたほうが良いでしょう。

また、鑑定士に報酬も支払う必要があるので、その報酬以上に相続税が減額できないとこの方法を採用するメリットはありません。

D. 売却価額による評価

不動産鑑定士による鑑定評価よりは登場頻度が高い方法が、相続後に売却した金額を相続税評価額とする方法です。

「路線価方式による評価額又は倍率方式による評価額>売却価額」となる場合にのみ、登場する方法になります。

その売買が売り急ぎがあるなど、特殊な状況での売買の場合には税務署から否認される可能性もあるため、慎重な判断が必要です。

相続税の土地評価についてもっと詳しく知りたい人は、土地の相続税評価 節税のポイントと評価方法をわかりやすく徹底解説を参照してください。

(2)建物の評価

建物についても遺産分割における評価と相続税申告における評価は異なることもありますが、遺産分割における評価については土地と一体として評価することが多く建物を単体で評価するケースはそこまでありません。 したがって、以下では建物の相続税申告における評価についてのみ詳しく解説します。

建物の評価額は、市町村が決定した固定資産税評価額をそのまま使います。

ただし、注意点がいくつかありますので、以下のとおりご紹介します。

東京都のマンションの場合

東京都のマンションの場合には、評価額の欄にその建物全体の固定資産税評価額が記載されています。これを使ってしまうととても高く評価されてしまうことがあるので、評価額の欄でなく、課税標準額の欄の金額を採用してください。

課税標準額の例

賃貸アパート・賃貸マンションの評価(借家権)

貸している建物の評価額は、以下の式で計算できます。

「建物の固定資産税評価額×(1-借家権割合×賃貸割合)」
借家権割合は前述の通り30%となります。

賃貸割合は「固定資産税評価額×(1-借地権割合×借家権割合※1×賃貸割合※2)」で計算します。

建物にリフォームがあった場合

リフォームや増改築をしたのに、それが固定資産税評価額に反映されていない場合には、下記金額を加算した金額が建物の相続税評価額となります。

(リフォーム費用-死亡日までの償却費)×70%

ただし、通常の維持修繕費の場合には、この計算は不要ですので注意しましょう。

詳しくは、下記を参照してください。
>>【相続税申告】亡くなる前にリフォームをした場合の家屋の評価

また、建物の相続税評価についてもっと詳しく知りたい人は、家屋(建物)の相続税評価額を徹底解説を参照してください。

2. 遺産分割

遺産分割においては評価が重要になるとお話しました。
評価額を相続人間でどのようにするか決めたあとに、その不動産を含めた遺産全体をどのように分割するかを決めることを遺産分割といいます。

(1)4つの遺産分割の方法

遺産分割は、大きく分けて下記4つの方法があります。

①現物分割:遺産をそのままの状態で分割する方法で遺産分割の原則的な方法です。
②代償分割:特定の相続人が特定の財産を取得した代りに代償財産を他の相続人に交付する方法です。
③換価分割:不動産や株式などの換金可能な遺産をそのまま相続するのではなく売却して現金にした後その現金を分けるという方法です。
④共有分割:遺産を複数の相続人で共有で相続する方法です。

それぞれの分割方法を具体例を使って確認していきましょう。

【具体例】
被相続人 母
相続人 長男、次男
遺産 自宅不動産 1億円
遺産分割方針   遺産全体で法定相続分である各1/2になるように

①現物分割

自宅不動産をそのまま長男と二男が半分づつ取得します。 自宅不動産を分筆して筆ごとに長男、二男が相続する方法です。

②代償分割

自宅不動産を長男(又は二男)がすべて取得して、長男から二男へ代償金5,000万円を支払う方法です。
結果的に長男も二男も5,000万円相当を相続したことになります。
長男:自宅不動産1億円 - 代償金5,000万円 = 5,000万円
二男:代償金5,000万円
代償分割の詳しい説明は、代償分割をわかりやすく徹底解説をご参照ください。

③換価分割

自宅不動産を1億円で売却してその売却代金を等分に分ける方法です。 税金や諸費用がかかった場合にはそれを差し引いた残額を二人で等分に分けます。
換価分割の詳しい説明は、換価分割をわかりやすく徹底解説をご参照下さい。

④共有分割

自宅不動産を長男と二男が各1/2の割合で共有取得する方法です。
この共有分割は後々兄弟で揉めることも多いので実務上は避けられることが多い方法です。
共有分割の詳しい説明は、共有分割をわかりやすく徹底解説をご参照下さい。

なお、遺産分割調停や審判の現場では、現物分割⇒代償分割⇒換価分割⇒共有分割の順番で調整されます。

(2)遺産分割協議書の作成

相続人間で遺産分割の方針が固まったら遺産分割協議書を作成します。

遺産分割協議書

遺産分割協議書の作成方法の詳しい解説は、遺産分割協議書の書き方をわかりやすく徹底解説|相続財産の種類別で紹介をご参照ください。

3. 相続登記(不動産の名義変更)

不動産は一筆ごとに不動産登記簿にその不動産の情報(地目、地積、所有者等)が保存されています。

相続により名義を変更する場合には、この登記簿の所有者の情報も変更しなければなりません。この手続を相続登記といいます。

(1)相続登記に必要な書類と費用

相続登記に必要な資料は、下記の通りです。被相続人(亡くなった人)と相続人の関係や、財産の分割を示すものが必要になります。

  1. 登記申請書
  2. 被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本、除籍謄本等
  3. 相続人全員の現在の戸籍謄本
  4. 相続人全員の住民票の写し
  5. 相続人全員の印鑑証明書(遺産分割協議の場合)
  6. 遺産分割協議書又は遺言書
  7. 委任状(代理人が申請する場合)

また、相続登記にかかる費用は、下記の通りです。

  1. 登録免許税
    固定資産税評価額×0.4%
  2. 上記必要資料を揃えるための費用
    戸籍等は1通あたり450円~750円がかかります。住民票や印鑑証明書の取得にも数百円がかかります。
  3. 司法書士に依頼する場合の手数料
    土地の数や評価額によって異なりますが、自宅のみの場合には10万円前後が相場でしょう。

詳しくは、「不動産登記における手続きや相続方法とは」を参照してください。

(2)相続登記に期限はあるのか

現状では、相続登記には期限はありません。
しかし、2024年4月1日から相続登記が義務化されます。

2024年4月1日以降は、相続で不動産取得を知った日から3年以内に正当な理由がなく相続登記をしないと10万円以下の過料の対象となります!

まとめると、現状では相続登記に期限はありませんが、2024年4月1日以降は3年以内という相続登記に期限が設けられます。

なお、現状は相続登記に期限がないからといって、長期間放棄してしまうと相続人が引っ越したり、亡くなってしまったりと手続きがより煩雑になってしまいます。

また、いざ売却したいと思ったときに相続登記ができていないとすぐに売却もできないというデメリットもあります。
できれば、相続登記が義務化されてない現状であっても他の相続手続きと同じタイミングで相続登記をしておいたほうが良いでしょう。

(3)不動産にかかる税金

不動産を相続した場合にかかる税金は、相続税と登録免許税です。なお、不動産取得税は、相続による取得の場合にはかかりませんのでご安心ください。

なお、相続と直接の関係はありませんが、不動産にかかる税金としては以下のようなものがあります。

  • 固定資産税:不動産を保有しているとかかる税金です。1月1日に保有している不動産(固定資産)に対して固定資産税がかかります。
  • 所得税:不動産を売却したり、貸したりした場合にかかります。

4. 相続税申告が必要な場合の重要な控除や不動産に関する特例

不動産をはじめとした相続財産からは、基礎控除や配偶者控除が引かれて税金がかかることになります。

また、不動産には小規模宅地等の特例という大きな特例が用意されていて、最大限活用すれば相続税の節税が可能です。

(1)基礎控除

基礎控除とは、いわゆる相続税の非課税枠のことで、「3,000万円×600万円×法定相続人の数」で計算します。
相続財産の合計がこの基礎控除を超えなければ相続税の申告が不要となります。

詳しくは「【相続税申告の基礎知識】基礎控除と法定相続人について詳しく解説します」をご覧ください。

(2)配偶者控除

配偶者は、相続財産のうち、1億6,000万円と配偶者の法定相続分のいずれか多い金額までは相続税がかからない配偶者控除という制度の対象となります。

つまり、配偶者はよほど多額の財産を相続するか、通常の相続分より多くの額を相続しない限り、相続税がかからないということです。

詳しくは「相続税の配偶者控除(配偶者の税額軽減)で税額を抑える方法【注意点も合わせて解説】」をご覧ください。

(3)小規模宅地の特例

小規模宅地の特例とは、

  • 亡くなった人が住んでいた土地
  • 事業をしていた土地
  • 貸していた土地

について、一定の要件を満たす人が相続した場合には、土地の相続税評価額を80%又は50%減額することができるというとても大きな特例です。

相続税を申告するにあたっては、この小規模宅地の特例をうまく活用することがカギとなります。

詳しくは「小規模宅地等の特例をわかりやすく解説。相続した土地にかかる相続税を最大80%減額」をご覧ください。

(4)地積規模の大きな宅地の評価

地積規模の大きな宅地とは、面積が500㎡又は1,000㎡を超える土地で、かつ、一定の要件を満たした土地のことをいいます。

地籍規模の大きな宅地は、その土地にかかる相続税を20%~30%程度減額することができます。

詳しくは「地積規模の大きな宅地の評価(規模格差補正率)を徹底解説【広大地の抜本改正】」をご覧ください。

不動産の評価が必要な相続税申告は税理士へ要相談

相続税申告において、不動産の評価は重要な手続きのうちのひとつです。
不動産の評価のうち、最も大きなウェイトを占めるのが土地の評価となります。

土地の評価は、評価する人によって評価額が変わるため、それだけ個別性と専門性が高い分野であるといえます。

また、相続税申告は不動産の評価だけでなく、様々なことを考慮しつつ進める必要があり、なかなか手間がかかる手続きとなります。

手続きの負担を減らし、適切な申告をするためには、正しい知識を持った税理士の力を借りることをおすすめします。

不動産(土地・建物)がある場合の評価方法・遺産分割・相続登記の写真

この記事の執筆者:角田 壮平

東京税理士会京橋支部所属
登録番号:115443

相続税専門である税理士法人トゥモローズの代表税理士。年間取り扱う相続案件は200件以上。税理士からの相続相談にも数多く対応しているプロが認める相続の専門家。謙虚に、素直に、誠実に、お客様の相続に最善を尽くします。

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相続税の手続きは慣れない作業が多く、日々の仕事や家事をこなしながら進めるのはとても大変な手続きです。

また、適切な申告をしないと、後の税務調査で本来払わなくても良い税金を支払うことにもなります。

税理士法人トゥモローズでは、豊富な申告実績を持った相続専門の税理士が、お客様のご都合に合わせた適切な申告手続きを行います。

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